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話題沸騰の大ヒット作を漸く楽しんだ
今年(2022年)の夏から秋にかけての大ヒット作「トップガン マーヴェリック」を漸く観ることができた。残念ながら映画館ではなく、ブルーレイでの視聴となってしまったが、大いに楽しみ、満喫することができた。
これは確かにおもしろい。実に良くできている。記録的な大ヒットもむべなるかな、当然だろう。
あるテレビ番組で、この映画を映画館で98回も観たという若い女性がいたが、98回はともかく、リピーターとして何回も映画館に足を運んだ人はかなり多かったようだ。実際、何度も観たくなる映画であることは良く分かる。
僕だって、立て続けに2回は観た。もっと観たいと思っている。
こういう無条件にめちゃくちゃおもしろく、何度も繰り返し観るリピーターが続出する大ヒット映画は、過去にも何本かあった。
僕の記憶ではブルース・リーの「燃えよドラゴン」や最初の「スター・ウォーズ」(エピソード4)、「タイタニック」などなど。
最近の邦画だと、「千と千尋の神隠し」「君の名は。」「シン・ゴジラ」あたりだろうか。他にもまだいくらでもありそうだが。
こういう大ヒット映画は、映画そのものの出来栄えはともかくとして、とにかく観ていて無条件に楽しめるものばかりか、1本の映画がその時代の空気を決めてしまうような決定的な影響力を持つことが少なくない。
今回の「トップガン マーヴェリック」もその系譜に連なる映画であることは間違いないだろう。
しかも完全な娯楽映画であるにも拘わらず、キネマ旬報ベストテンでは、読者選出も含めてどちらも第2位という離れ業をやってのけた。映画としての完成度も非常に高く評価されたことが分かる。
実際に観てみると、確かに手に汗握るおもしろさで、身を乗り出して見入ってしまう。夢中にさせられる。
なお、この映画は若きトム・クルーズを一躍スターダムに押し上げた記念すべき「トップガン」(1986年)の何と36年振りの続編であることは今更言うまでもないだろう。
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映画の基本情報:「トップガン マーヴェリック」
アメリカ映画 131分(2時間11分)
2022年5月27日 日本公開
監督:ジョセフ・コシンスキー
脚本:アーレン・クルーガー、エリック・ウォーレンシンガー、クリストファー・マッカリー
出演:トム・クルーズ、マイルズ・テラー、ジェニファー・コネリー、グレン・パウエル、ヴァル・キルマー 他
音楽・主題歌:レディ・ガガ
撮影:クラウディオ・ミランダ
キネマ旬報ベストテン 2022年外国映画ベストテン第2位 読者選出外国映画ベストテン第2位
読者選出共に第2位と、娯楽映画としては異例の高い評価に驚かされる。
どんなストーリーなのか
ある分野のトップクラスの人間を「トップガン」と呼ぶが、この映画のトップガンは、アメリカ海軍に所属する最新鋭戦闘機の最高のパイロットを指すことはもちろんだが、元々の意味は「アメリカ海軍戦闘機兵器学校の通称」なので、留意が必要だ。
36年前の前作で大活躍を見せたトム・クルーズ扮するマーヴェリックは見事、トップガンに収まったが、それから30年以上、数々の戦功を挙げ、勲章をいくつも取りながらも、キャプテン(大佐)のままで、将官に出世することもなく、現場のパイロットを続けている。
今回もまた上司の指示を無視して、ムチャな行動に出て、驚嘆すべき結果を残しながらも、処分を受けてしまう。
それでもかつての戦友で今は遥かに出世した後ろ盾の計らいで、辛うじて精鋭パイロットが揃うかつての現場「トップガン」に復帰することになる。
但し、パイロットとしてではなく、あくまでも若き精鋭たちの教官としてだった。
そこで困難な特殊勤務を与えられ、そのミッションを達成するために、若きパイロットたちをトコトンしごいて、ミッション達成の責任を負わさせる羽目に。
あるならずもの国家が国際ルールを無視して進めている濃縮ウランの開発施設を破壊した上で、そこから無事に脱出するというミッション。敵国の守りも厳重であり、まともにやっては絶対に不可能なミッションだった。
2つの奇跡が起きないと生きては帰れない超困難な試練を乗り越え、核施設を破壊した後で、無事に生還できるのか?若き精鋭パイロットたちと鬼の教官との命をかけた戦いが、今、始まる。
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否が応でも盛り上がる設定
厳しい訓練の様子と何度やってもうまくいかないシミュレーション。
そして準備不足のまま遂に実行される特殊勤務。手に汗握るハラハラドキドキの本番ミッションの遂行が、徹底したリアルな映像で映し出される。
実現不可能な困難な状況を徹底的に設定し、それに果敢に挑んで目的を遂げることができるかどうか?というプロットを描くのは、大ヒット映画の定番で、観ている者は手に汗握って、ハラハラドキドキ、画面に釘付けになる、という映画を観ていて最も無我夢中になれる題材だ。
何と言っても黒澤明の「隠し砦の三悪人」がその典型で、あの第1作目の「スター・ウォーズ」(エピソード4)は、これをモデルにしたことでも良く知られている。
何度も困難な訓練を繰り返し、遂に迎える最後の本番では果たしてどうなるのか?という展開は、ある意味でヒット映画の定石である。
アドレナリンが上がりっ放しに
だが、これほどまでに観る者の目と心を喜ばせてくれるものは、滅多にない。
本当におもしろい。興奮させられる。観ていて、アドレナリンが上がりっ放しになってしまう。
そこに36年前の生死をかけた因縁が絡んでくるあたり、見事の一言。
不可能だと思われるミッションに果敢に挑むも、次々と襲いかかってくる絶体絶命のピンチの連続。本当にハラハラドキドキさせられて、時の経つのを忘れて、見入ってしまう。
実に良くできたシナリオだ。
正に奇跡がいくつか重ならないと実現できないという極めて困難なミッションを成し遂げることができるのか、そして逃げ切って、生きて帰ることができるのか?
そのスリル感が半端じゃない。
観たことのない驚嘆の映像の連続
このめちゃくちゃおもしろい設定を、未だかつて観たことのない驚嘆の映像にまとめ上げたのが、これまた素晴らしいの一言。この驚異の映像がなければ、これほどの大ヒットにはならなかっただろう。
数多くのリピーターを輩出したのは、その有無を言わせぬ圧倒的な映像の凄まじさにあったことは間違いない。
あの映像と興奮をもう一度味わいたい、そう願う人がいなければ、リピーターは発生しないのだ。
本当にここには最新鋭の戦闘機の凄まじい空中飛行と戦闘シーンががこれでもかとばかりに、嫌になるほど映し出させる。それが全くすごいの一言。
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実際に戦闘機に乗っているかのようなリアル感
まるで超最新鋭のジェットコースターに乗っているかのような感覚なのだ。
映像そのものの傑出した質の高さもさることながら、この「マーヴェリック」のすごいのは、映画を観ている観客そのものが、実際に戦闘機に乗り込んでいるような感覚を味わえることだ。
あの超高速の戦闘機に実際に乗っているかのようなリアル感。臨場感というよりもリアル感なのである。
どうやって撮影したのか、本当にすごいものだと思う。
これが今までの映画にはなかった全く新しい体験となったことは間違いないだろう。
その意味で、この「マーヴェリック」は映画史に燦然と輝くエポックメイキングになったとしか言いようがない。
トム・クルーズのこと
この映画を紹介するのに、36年後にも見事に主演を張って、製作者の一人にも名前を連ねているトム・クルーズについて触れないのは、あまりにも片手落ちだと叱られてしまう。
だが、僕は昔も今も、トム・クルーズには特別な思い入れも感慨もない。
別に嫌いでもないが、特別好きな俳優でも何でもない。
「ミッション・インポッシブル」シリーズはずっと観続けているし、何と言っても僕が崇拝して止まないあのスタンリー・キューブリック監督が遺作の「アイズ ワイド シャット」でトム・クルーズの起用に拘ったことは大変なことだと思っている。天才監督を惹きつけた何かがあったのだと思う。
この「マーヴェリック」ではさすがにいい味を出しているし、非常に感動的なシーンをそつなくこなし、いい奴だなと素直に思わせてくれる。
36年前の「トップガン」と比べると、さすがに歳を重ねたなと感じさせるが、いい歳の取り方をしたと感心する。
数十年間に渡ってハリウッドのトップスターの座を守り続けてきた微動だにしない自負と自信が漲っている。
素晴らしいことだと思う。
大絶賛で終わらせたいが、そうはいかず
本当に夢中になって映画を楽しめたのは事実。大いに盛り上げる脚本とそれを見事な映像とリアル感で、観る者を完全に映画の中に引きずり込んでしまった注目の若手監督コシンスキーの大変な辣腕振りに脱帽。
だが、やっぱり僕は、この映画には手放しで喜べないものを感じてしまう。
野暮なことを言いたくないのたが、どうしても言わないわけにはいかない。
僕の人生感がかかってくる。
これは一言で言うと、アメリカの国威発揚映画である。36年前の「トップガン」はまさにアメリカの右翼映画というか、政治的には大きな問題を抱えた映画だったというのが僕の評価。
今回の「マーヴェリック」は前作に比べれるとまだいくらかまともだが、やっぱりこれでいいとは言えないのである。
アメリカの一方的な歪んだ正義感
あるならずもの国家がNATOの規則に違反して核開発を進め、濃縮ウランを貯蔵しているというのが元々の設定だ。それをけしからんと言って、アメリカが一方的に武力を用いて、見つからないように密かに敵国内に潜入飛行し、勝手に貯蔵庫を破壊して、後は必死で逃げ帰る。発見されれば当然、空中戦を展開し、敵機を撃ち落とす、つまり本格的な実戦を厭わないという一方的な武力行使である。
こんなことが認められていいわけがない。
こういうものを観て、問題意識なく無邪気に喜んでいていいのか!?という話しである。
とあるならずもの国家が、位置や地形などからイランを指しているのは、一目瞭然だ。
イランに問題があることは分からないではないが、イランにはイランの言い分がある。
僕が一番嫌でたまらないのは、核兵器を山のように独占的に所有している超大国が、遅れて核兵器を開発しようとする国に対して、それを一切認めず、トコトンその計画をぶち壊しに行くという発想。
これには本当に虫唾が走る。この世の中で最も納得ができず、最も腹が立ってならないものだ。
核兵器の開発を認めるべきだと言っているわけでは、もちろんない。ましてや、北朝鮮の行動を容認しろなどと言っているわけでは決してないので、誤解しないで欲しい。
他国の核開発や濃縮ウランの貯蔵庫を一方的に武力で破壊するなら、その前にアメリカの自分たちの持っている核兵器を全て廃棄したらどうなんだ!と言いたいのである。
そういう意識をこれっぽっちも持たずに、他国の核開発を一方的に武力で阻止するなんて、そんな理不尽なことが許されるわけがない。それは明らかにアメリカの一方的な悪しき正義感である。歪んでいる。そんなことを認めていいのか!?
この映画では、そういう視点が一切欠落している。残念だ。
娯楽映画としては、これ以上におもしろいものを見つけることができないくらいにおもしろく、興奮させられるが、あれを観て「良かった、良かった」「アメリカのトップガンは素晴らしい」などとノー天気に喜んでいることはできない。
その根本的な問題点を拭い切れず、どうしても引っかかってしまうのだ。
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敵国(イラン?)の武装能力と攻撃力に驚愕
敵国は間違いなくイランとして描かれているが、そのイランらしい国の武装能力と攻撃力の水準の高さにビックリ仰天してしまった。
映像としても、これは戦闘機のド派手な飛行シーンに勝るとも劣らないインパクトがあった。
雪の積もった峻厳な山岳地帯のあちこちに設置されたミサイルの発射台が非常にリアルで、これは中々のものだと驚嘆。
それが、終盤一斉にミサイルを発射させ、トップガンたちを迎撃するシーンは、この映画の最大の見どころの一つだ。
戦闘機そのものもアメリカの戦闘機よりも遥かに高性能で、まともに対峙したら勝ち目がないという前提条件は、嬉しい。
イラン?の恐るべき軍事能力の反面で
今、ロシアによるウクライナへの侵略戦争で、イラン製のドローン兵器がロシアにもたらされてかなり話題になっているが、何で超大国のロシアがイラン製のドローンなどを借りなきゃならないんだ?と訝しく思っていたが、イランはアメリカも真っ青の軍事大国なのであった。
その片鱗をこの映画で思い知らされる。
その割に、かなり古い型とは言っても、戦闘機そのものを敵の中枢基地から簡単に盗み出せるあたりの描写はあまりにも安易で、ご都合主義ではないか。
あそこは興醒めだった。
いずれにしても、敵国の軍事力の水準の高さに恐れおののくようなリスペクトと称賛を送っている点だけは認めておく。これで見下していたら、本当に怒りが収まらなくなってしまう。
もっとも敵もめちゃくちゃ強くて、最新鋭の軍事力を誇るという設定にしなければ映画が盛り上がらないので、そういう設定にするのは至極当然のことだったとは思うが。
根本的な問題点が拭い切れない
この映画の抜群のおもしろさと興奮は認め、僕自身も満喫はしたが、返す返すも根本的な問題点が拭い切れないことが残念でならない。
妙にリアルな敵国など想定せずに、政治色を一切断ち切って、頗る困難なミッション達成と、そこからの脱出劇というシチュエーションだけをトコトン追求してもらえば良かったかもしれないが、それではまたリアル感が欠如して、盛り上がらないだろうなとは思うのだが。
取扱いの厄介な映画と言うしかない。複雑な心境だ。
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この際、両方とも観てほしい。かつて観たことのある方も、あらためてもう一度どうぞ。
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