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目 次
リドリー・スコットのこと
リドリー・スコット監督は僕が最も熱愛している映画監督の一人だ。もちろん僕だけではなく、多くの映画ファンを魅了してやまない映画界のレジェンドと呼ぶべき至高の存在。
83歳となった今も、まだ精力的に力作、傑作を作り続けている姿には本当に頭が下がる。
これまでに作り上げた監督作品は27本に及んでいるが、映画史に残る指折りの名作、傑作がズラリと並んでいて壮観の一言に尽きる。
名作・傑作の数々
何と言っても2本のSF映画が空前の高みに立っている。あの「エイリアン」と「ブレードランナー」だ。この2本だけでもリドリー・スコットの名前は、映画史に燦然と輝き続けることだろう。
高倉健を主演にあの松田優作が重い病をおして出演した「ブラック・レイン」。大阪を舞台とした大傑作だ。
そしてアカデミー作品賞に輝き、ラッセル・クロウを一躍トップスターに押し上げたあの「グラディエーター」もリドリー・スコットの監督作品。
更に現代物の「テルマ&ルイーズ」。実際に起きた壮絶な戦闘を半端じゃない臨場感で描き切った「ブラックホーク・ダウン」などなど。
本当に何ともすごいラインナップ。驚嘆するしかない。正に映画界の生きる伝説。現存の映画監督でこれだけの名作、傑作を量産している監督は他には見当たらない。あのクリント・イーストウッドもリドリー・スコットの前では影が薄いというのが、僕の嘘偽らざる実感である。
リドリー・スコットはどこがすごいのか?
それはもうヴィジュアルと映像の傑出さに尽きる。元々、リドリー・スコットは映画を撮る前にCM界の大巨匠として知られていた人だ。2,000本以上のCMを作成したらしい。
CMは極々限られた時間の中に、観る人に強烈な印象と説得力を与えなければならないため、とにかく映像美とセンスの良さが問われる世界。そこで腕を磨いた人は映画監督になっても、例外なく印象的かつ説得力のあるいわば強烈にして斬新な映像を撮る人が多い。
正にその典型がリドリー・スコットというわけだ。日本にも市川準や大林宣彦、相米慎二などが有名で、やっぱり独特の映像美で有名な監督ばかりである。
異なるジャンルで最高の作品を作り上げる天才
SFの「エイリアン」と「ブレードランナー」。この2作がリドリー・スコットの監督第2作と第3作だったというのが恐ろしい限り。
現代の犯罪ものの「ブラック・レイン」と「テルマ&ルイーズ」「ハンニバル」。
戦争映画の「ブラックホーク・ダウン」。古代ローマを舞台とした歴史ものの「グラディエーター」。
それぞれがそのジャンルの最高傑作という映画を作る人は、当然のことながら滅多にいないものだ。僕が一番熱愛している神様、スタンリー・キューブリックだけだ。
こういうことは特別な天才だけに可能なこと。恐るべき天才。それがリドリー・スコットなのである。
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傑出したヴィジュアルと映像美
この人の映像センスにはとにかく脱帽するしかない。斬新にしてスタイリッシュ。そしてどの映画でも、独自の造形美を誇る。
光の当て方というか照明が先ずはすごいのである。深みのある陰影に満ちた映像はこの卓越した照明の賜物。
そして、どんなにジャンルが異なってもその独特の斬新にして深遠な映像美は、他ならぬリドリー・スコット独自の世界そのものになり切っているのがすごい。映像を一目観て、リドリー・スコットの作品だと分かる唯一無二の完成度の高さが、他には類をみない。
哲学的な深遠さを感じさせる陰影に満ちた映像美
リドリー・スコットの映像を観ると、その映像はヴィジュアルと映像美を極めるための気を衒ったものではなく、その深遠な映像で、それぞれの世界の最も深い本質的な部分、いってみれば哲学的な深淵さに至るまで掘り下げて、一切の妥協なく描き尽くす、そんな印象を受けてしまう。映像を通じて哲学を語る稀有の存在だ。
他にも傑作はいくらでもある
これだけの傑作がリストアップされると、他の作品は中々目立ちにくいのだが、他にも傑作はいくらでもあることに驚かされる。
「マッチスティック・メン」や「アメリカン・ギャングスター」、「1492コロンブス」、更に「羊たちの沈黙」の続編「ハンニバル」など、本当に枚挙にいとまがない。
あまり注目されていない隠れた傑作を紹介したい
僕はあまりにもリドリー・スコットのことを書き過ぎたようだ。熱愛する監督の作品を取り上げようとするとこうなってしまう。どうかお許し願いたい。
今回はこのリドリー・スコット監督のあまり話題となっていない、彼の作品としてはあまり注目されていない隠れた傑作を知ってもらいたいのである。
リドリー・スコットの多彩な名作・傑作群の中にあって、本当にあまり知られていない、埋もれてしまった傑作である。
これを観て、僕は大いに気に入った。レオナルド・ディカプリオ主演の「ワールド・オブ・ライズ」である。
もちろんリドリー・スコットが監督し、レオナルド・ディカプリオとラッセル・クロウが出ている映画なのだから、話題にならないわけがなく、現にそれなりのヒットもした作品なのだが、リドリー・スコットの傑作・名作群の中にあっては、影の薄い作品となってしまっていることは確かである。
ある意味で何とも贅沢な話しなのである。
僕はあまり期待もせずに観はじめたのだが、想定に反して非常に気に入って、リドリー・スコットを更にリスペクトすることになった。これは正に今日の時代背景を反映して、中東のイスラム原理主義を奉じるテロリスト集団とアメリカのCIAの工作員を巡るポリティカル・アクション映画である。
映画の基本情報:「ワールド・オブ・ライズ」
アメリカ映画 128分
2008年12月20日 日本公開
監督:リドリー・スコット
脚本:ウィリアム・モナハン
原作:デヴィッド・イグネイシャス Body of Lies
出演:レオナルド・ディカプリオ、ラッセル・クロウ、
マーク・ストロング、ゴルシフテ・ファラハニ 他
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どんなストーリーなのか
これはアメリカCIAの凄腕の工作員がイスラム過激派のテロリストグループとの間で繰り広げる過激なアクションと頭脳戦の駆け引きを描いたものだが、かなり入り組んでいるので、丁寧に観ていないと訳が分からなくなる。
CIAの側も一筋縄ではいかない。主人公のフェリス(レオナルド・ディカプリオ)は世界中を飛び回り、常に危険と隣り合わせの過酷な最前線の現場で身体を張っているのだが、その上司のホフマンは、ドローンでフェリスの行動を観察しながら、アメリカの自宅やCIAの本部から事細かに電話で指示を出すという関係にある。フェリスが綿密に計画した作戦を、現場を無視して勝手に変更させるなど、フェリスの妨害ばかりしているが、フェリスは無視できない。
大規模な自爆テロを繰り返すテロリスト集団のリーダーを突き止めるため、新たにヨルダンでの活動を指示され、ヨルダン情報局の責任者ハニと共同でテロリストを壊滅しようと身体も頭も使って危険に身を投じるのだが、フェリスにとって真の敵はテロリストなのか、協力相手のヨルダン情報局のハニなのか、上司のホフマンなのか?錯綜した展開に手に汗を握る。
派手なアクションとスピード感、「嘘」を巡って騙し騙される駆け引きの連続に、ハラハラドキドキが止まらない。
果たしてフェリスは、テロリストのリーダーを探し出し、ヨルダンの治安を取り戻すことができるのか?ホフマンとハニとの危険な関係はどう決着がつくのだろうか?
傑出したヴィジュアルとアクション
おもしろいこと、この上ない。とにかくリドリー・スコットならではの傑作したヴィジュアルと映像美。過激なアクションシーンに圧倒されてしまう。この映画を作った際、リドリー・スコットは71歳であった。それでいてこの過激なアクションと全世界を股にかけてスピーディに展開する濃厚なドラマに脱帽するしかない。
ドローンによる最新鋭の監視システムなどの映像も見応え十分だ。
自爆テロの爆発シーン、リアルな銃撃戦、過激な拷問シーンなども相当リアルに描かれ、テロリストたちの恐ろしさが、痛いほど十分に伝わってくるが、一方でCIAのディカプリオの方も、かなり酷いことを次々と繰り広げており、そのあたりも衝撃的な映像で妥協なく描き出す。アメリカ側の手段を選ばない非道さを容赦なく映し出すあたり、手抜きは一切ない。
そんな目を覆いたくなる悲惨な暴力の連鎖を、リドリー・スコットならではの傑出した映像の力で訴えかけるのである。
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ディカプリオの最高の映画かも
この映画の主人公フェリスに、僕は大いに好感を覚えた。ディカプリオが素晴らしいのである。
前に紹介したディカプリオがアカデミー主演男優賞を獲得した「レヴェナント」での演技も捨てがたかったが、僕は今回の工作員役の方がズッと好きだ。
本当に身体を張った演技で、全身傷だらけ、目を覆いたくなるような酷い顔になりながらも、魂がブレない信念の男を見事に演じる。
特に好感を抱かせるのは、上司のホフマンに何度も邪魔をされ、それに腹を立てながらも、組織として彼に従い、彼の命令を遂行しなければならないという難しい立場を、実に見事に演じていること。これには共感を覚え、ディカプリオのことを本当にすごいなあと思ってしまう。
そして、何と言っても、現地のアラブ人を見る目と冷徹になり切れない情のある対応が、何とも感動を呼ぶ。
ヨルダン人役のマーク・ストロングにぞっこん
ディカプリオに勝るとも劣らない印象を残すのが、ヨルダン情報局のハニを演じたマーク・ストロング。彼は様々な映画でスキンヘッドで登場することが多く、そこでも強烈な印象を残すのだが、今回は髪がフサフサで、実に精悍、見るからにカッコいい。ものすごい存在感に圧倒される。僕は本当に惚れ込んでしまった。実に魅力的だ。
もう一人の主役である名優ラッセル・クロウは、元々リドリー・スコットとは名作「グラディエーター」始め、何度もタッグを組んでいる。
今回の役回りは憎まれ役で、このクロウを好きにはなれないが、リドリー・スコットから出演を依頼されたとき、20キロ太ってくれと言われたそうだ。そのとおりに楽をしてブヨブヨと太った憎まれ役を見事に演じた役者魂は、称賛されていい。
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テロリストとの攻防を描きながらアメリカ目線でないのが嬉しい
これはアメリカCIAとイスラム過激派テロリスト、そこに地元中東の情報局が三つ巴で複雑に絡み合う映画だが、アメリカを賛美し、アラブ人やイスラム過激派を貶めるような偏った映画ではないことをハッキリと宣言しておきたい。その点が最高だ。
決してアメリカ目線ではなく、特に主人公のフェリスがどこまでも現地のアラブ人側に寄り添って行動し、現地のアラビア語を自由自在に使いこなし、彼らと苦楽を共にする姿が嬉しくなる。
アラブ人へのリスペクトが随所に伺えるのである。この映画が素晴らしいのは、そこにある。
ラストシーンには目頭が熱くなってしまう。
賛否両論だが、ご自身の目と感性で確かめて
リドリー・スコットの映画としてはあまり注目されていないばかりか、この映画は賛否両論で、貶す人も多い。
僕は隠れた傑作だと高く評価したいが、どうか読者の皆さんは実際に観ていただいて、ご自身の目と感性で確かめてほしい。
このディカプリオに好感を持ってもらえれば、自ずと評価は決まるのではないだろうか。どうか騙されたと思って観てほしい。リドリー・スコットはまだまだ健在だ。
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