目 次
先日のブログ記事の読者が教えてくれた絵本
先日配信したばかりの信長貴富の「初心のうた」に関する朝日新聞の記事についての僕のブログを読んでくれた読者が教えてくれた谷川俊太郎の絵本「せんそうしない」。
静岡県に在住の僕のブログの愛読者が、信長貴富の記事を読んで、直ぐにLINEで感想を送ってくれた。「あの記事を読んで谷川俊太郎の『せんそうしない』を思い出した」という貴重なコメントを寄せてくれたのだ。
詩人の谷川俊太郎のことは邦人の合唱曲を通じて、僕は長い間ずっと関わってきた。
谷川俊太郎の詩は非常に分かりやすい現代語で書かれた親しみやすいもので、しかも内容的にも奥の深いものばかり、ときにハッとさせられること、ドキッとさせられる衝撃も秘めており、邦人の合唱曲では、ベテランも新人も実に多くの作曲家が競い合うようにその詩に曲をつけている。
そんな谷川俊太郎が書いた戦争に関する絵本。話しを聞いただけで、心がときめき、直ぐに読みたいと、いてもたってもいられなくなった。
即座にネットで注文、直ぐに届いた。そして直ぐに本を開いて、読み始めた。
直ぐに読めた。アッという間に読めた。
ものすごく感動した。
という次第で、今回は、戦争の理不尽さを訴える貴重な絵本の紹介だ。
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「せんそうしない」の基本情報
講談社から発行された絵本。詩(文)は谷川俊太郎、絵は江頭路子。2015年7月15日第1刷発行。僕の手元にある本は2022年8月23日発行の第9刷である。かなりの発行を続けていることが分かるが、初版は2015年とすると、これは今回のロシアによるウクライナへの侵略戦争が始まる前に既に出版されていたころが分かる。
この2015年というタイミング、何か直接のきっかけがあったのであろうか。
ページ数はわずか25ページしかない。本当に直ぐに読める。アッという間に読めてしまう。
僕は勝手に思い込んでいて、この絵本の中には、谷川俊太郎の戦争に関する詩が何編か収められているものだと思っていた。少なくても4編か5編は。
ところが、ここには1編の詩しかない。行数にしてちょうど20行。本当に1分足らずで、いや1分もかからず読めてしまう。
絵本だから、むしろ絵が主役か
谷川俊太郎の詩は、本当にアッという間に読めてしまうのだが、それでこの本を読み切ったということには、もちろんならない。
これは絵本である。詩以上に、絵が重要だ。この絵をじっくりと見てもらうと、それなりに時間を要することになる。
江頭さんの絵はそれに十分に値する中々素敵なものだ。
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1分で読めるが、記憶は一生
この絵本。谷川俊太郎の詩(文)は本当にごくごく短いもので、それだけ読むなら大人なら、ホンの数十秒で読めてしまう。とにかくわずか20行しかないのだから。文字数にしても280字程度。
しかも子供向けに全てひらがなで書かれていることもあって、本当に直ぐだ。
2回繰り返し読んでも1分かからない。それでいて、記憶は一生続くことになる。
戦争がないありきたりの風景が続く絵
先ずは江頭さんの丁寧な優しい絵をじっくりと眺めていただこう。
ここには戦争のないごくありふれた日本の日常が書かれている。基本的にはこの絵本に出てくるのは日本の小学生とおぼしき男の子と女の子の2人。
この2人の子供たちの自然の中での日常生活が淡々と描かれるので、その中には戦争の気配すらない。まさにのどかな田園風景が続く。
1枚だけ出てくる戦争の絵のインパクト
そんな中で、終盤、1枚だけ戦争で破壊された建物と街の風景が出てくる。これがちょっとした衝撃だ。自然の中での屈託のない子供たちの世界が描かれてきた中で、突然の戦火で破壊された建物と街の光景。
のどかな田園風景も戦争が起きてしまえば、こんな荒涼たる風景に一変してしまう。視覚で訴えられると非常にインパクトが強く、印象に残る。
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偶然にもウクライナの象徴が描かれている衝撃
もう一つ特筆すべきことは、本書の扉と裏扉の下部に描かれた絵のことだ。この色も付いていないモノクロの絵に僕は目を奪われてしまった。
そこに描かれているのは、何と大地一面に咲き誇るひまわりの絵なのである。つまりウクライナの象徴だ。僕はこれを一目見るなり、ウクライナの光景だと思った。間違いないだろう。
だが、実際にはこの絵は上述のとおりロシアによるウクライナへの侵略戦争以前に描かれたものだ。こんな奇遇があるのである。
僕はこれに大変な衝撃を受けた。
奇しくもこの絵本はウクライナへの支援になっていたのである。
絵を見ながら詩を繰り返し読む
この絵をじっくりと味わっていただいて、その絵に添えられた谷川俊太郎のひらがなの詩を読む。繰り返し読む。
谷川俊太郎の詩は、非常に短いものとは言っても、今回もやっぱりハッとさせられる衝撃の言葉が満載だ。
それを繰り返し読む。何度も何度も読む。
するとドンドン、この絵本の中に、谷川俊太郎が訴える戦争の理不尽、「人の大人だけが戦争をする」という分かっていながらもこれ以上はない理不尽さが、改めてひしひしと伝わってきて、何とかしなければならないという気持ちが、沸々と湧き上がってくる。
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詩人・谷川俊太郎のこと
このあまりにも著名な現役の詩人については簡単な紹介に留めたい。
絵本の扉に掲載されている紹介分からそのエッセンスを貼り付けたい。
「詩人。1931年東京生まれ。(中略)受賞・著書多数。詩作のほか、絵本、エッセイ、翻訳、脚本、作詞など幅広く作品を発表。(後略)」
イラストレーター・江頭路子のこと
同じく本書の扉からエッセンスを掲載させていただく。
「イラストレーター、絵本作家。1978年福岡生まれ。熊本大学教育学部卒業。MJイラストレーションズ(峰岸塾)、山田博之イラストレーション講座で学ぶ。(発表された絵本の紹介は省略)雑誌や教科書の挿絵の仕事も多い。
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絵本のタイトルに詩人の決意が滲む
僕は初めてこの絵本を手に取った時から、「せんそうしない」というタイトルが気になっていた。
当初は、本文の詩では自然界での事実関係が淡々と述べられているだけで、その中には決意も訴えも書かれていないのだが、唯一、本のタイトルに「せんそうしない」とあって、正に「戦争をしない!」という自らの決意と、為政者、国の指導者に「戦争はしないこと!」という訴えがなされているものと思い込んでいた。
タイトルにはその決意が込められていると。
ところが、冷静に詩を読み返すと、それは僕の勝手な思い込みで、本文中に何度も繰り返し「せんそうしない」と出てくるその言い回しだと気が付いた。何を今更と笑われてしまいそうだが。
「こどもはせんそうしない」という「せんそうしない」だ。
つまり、自然界の事実としての「戦争をしない」状態を言い表している表現だった。それが繰り返し出てくる。
12回も出てくる「せんそうしない」。それをタイトルに持ってきた。それだけのことじゃないかと。
タイトルに決意表明があると捉えたい
だが。
一旦は、そう解釈したが、やっぱり一番最初に感じた、詩人の決意表明がこのタイトルに籠められている、僕はそう捉えたい。
このタイトルに、本文中に繰り返し出てくる「せんそうしない」という事実の説明に加えて、「戦争をしない」「戦争をしちゃ、ダメだ」という切実な決意が滲み出ていると解したい。
詩の解釈は読む人それぞれが好きなように感じてくれればいいはずだ。少なくても僕は、そう感じられてならないという話しである。
読者の皆さん、いかがだろうか。
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「戦争しない」と声に出すことの重要性
前回の信長貴富の「初心のうた」に関わる僕のブログの中で、僕は歌の力で戦争を止めたりすることは確かにできないだろうし、効果はないかもしれないが、黙っていてはダメで、とにかく声を出してみよう、合唱が一番いいけれど、どんな歌でも、詩でも、小説でも、メッセージを発信することそのものが重要だ、と訴えた。
その直後に知った谷川俊太郎のこの絵本。こんな嬉しいことはなかった。こういうものがもっともっと出てきてほしい。
そう願わずにいられない。
僕も非力、微力ながらもこのブログを通じて、できるだけそのことを訴えていくつもりである。
最後に、紹介してくれたM子さんのこと
この絵本を教えてくれたのは、僕がかつて静岡県の三島社会保険病院(この病院は経営母体が変更となって、現在は「JCHO三島総合病院」となっている)の事務局長を務めていた際に、三島市内にある地元のFM局「ボイス・キュー」のパーソナリティとして広く活躍されていた地元三島では良く知られた歌姫でもあったM子さん。
実は、僕自身が「ボイス・キュー」でクラシック音楽紹介のパーソナリティを3年間も務めさせてもらっており、M子さんは初代の相方さんだった方。
現在は子育てもあってボイス・キューから離れているが、あの時の縁で、今でも僕のブログを毎回熱心に読んでくれており、この絵本の紹介につながったという次第。
M子さんは現在、学校の読み聞かせボランティアとして、子供たちに絵本の読み聞かせを行っている。
この「せんそうしない」はまだ読み書かせができていないようだが、きっと近日中に果たしてくれるだろうと期待している。
なお、M子さんの話しでは、画家の江頭路子さんは奇しくも現在、三島市に移住されて、三島市の大通り商店街に絵本の専門店「えほんやさん」を開いていらっしゃるとのことである。
M子さんには心から感謝したい。
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「せんそうしない」どうかお子さんと読んで
この素晴らしい絵本を、どうかお子さんに読み聞かせていただきたいと切に願うものだ。
谷川俊太郎の詩は声高に反戦を訴えるようなものではなく、戦争の本質に易しく迫っているもので、子供もこれを読めば、「そうか、そうだよね」と自然に思える易しい言葉で書かれている。
こんな易しい口調で、戦争の本質に鋭く迫る谷川俊太郎には脱帽するしかない。
更に江頭さんの絵が心に沁みてくる。
いい絵本だな、心からそう思う。
是非とも手に取ってお子さんと一緒に読んでみてください。
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