目 次
著者の江頭路子さんとの感動的なやり取り
先月配信させていただいた「せんそうしない」。谷川俊太郎の詩に江頭路子さんが絵を描いた絵本である。
僕はこの絵本のことを僕のブログの読者でもある古くからの友人M子さんから教えてもらったのだが、一読して非常に感動して、早速ブログの記事として取り上げ、配信させてもらった。
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著者の絵本作家江頭さんにメールを送信
元々この絵本を紹介してくれたM子さんが、絵本作家の江頭路子さんが僕にとっても縁の深い静岡県の三島市で「えほんやさん」という書店を開設しているとの情報を得て、僕はその「えほんやさん」のホームページにアプローチし、思い切って江頭路子さん宛てに、あのブログ記事を送らせてもらったのだ。
「これこれこういう次第で、江頭さんが描かれた絵本をブログで紹介させていただいた。ご多忙のところ大変い恐縮ですが、一言コメントやご感想など聞かせていただければ幸甚です」云々という次第。
ダメもとで自分がブログで紹介した絵本の作者に、僕が書いたブログ記事を直接送りつけたというわけだ。
どうなるだろうか?江頭さんからご返事をいただけるだろうか?
こっちはワクワクドキドキ。いや、本当にヒヤヒヤものだった。
江頭さんから直々に感動の返信が届く
すると、待つこと一日。直ぐに江頭さんご本人から返事が届いた!!
それがまた非常に感動的なものだったのである。
というわけで、今回は絵本の作者ご本人との感動的なやり取りを紹介させてもらう。
あの「せんそうしない」を巡る思わぬ制作秘話もたくさん聞かせてもらうことができた。
この江頭さんとのメールのやり取りの経緯と作者だけが知っている貴重な制作秘話を、この熱々たけちゃんブログで配信し、公開させていただくことについては、もちろん予め江頭さんの承諾を得ていることをお断りしておく。
江頭さんは「大丈夫ですよ~」と快諾してくださった。何とも嬉しい話し。
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僕は何も知らないで絵本だけを見て書いた!
僕はあの絵本「せんそうしない」をブログで紹介するに当たって、何の前情報も持たずに、あの絵本を読んで僕の感性だけで感じた感想などを、ありのままに書かせてもらった。
僕の勝手な思い込みも少なからずあったことだろう。僕があの絵本だけを読んで率直に感じた感想が、果たして的外れではないのかという不安もあった。
そういう意味では僕の方でもいくつか確認したいこともあったのだ。
そこで、思い切って、以下のように江頭さんにメールでお願いした。
えほんやさん 江頭路子先生
私はブロガーの〇〇 〇と申します。
本やクラシック音楽、映画の紹介などを中心に350本以上の記事を配信してきました。 この度、三島市に縁の深い読者から、江頭先生が谷川俊太郎と作られた絵本「せんそうしない」を教えていただいて、早速読ませていただき、ブログ記事に紹介させていただきました。
その教えていただいた方から江頭先生が現在、三島市に在住されて、「えほんやさん」を開かれているとも伺い、ホームページからこの問い合わせにたどり着いた次第です。
是非とも作者の江頭先生に記事を読んでいただきたく、何卒よろしくお願いいたします。
本当にあの絵本には感動いたしております。
「せんそうしない」(谷川俊太郎・文、江頭路子・絵)人の大人だけが戦争する理不尽を易しい言葉と絵で伝える絵本 | atsuatsutakechan’s blog https //www.atsutake.com/no-war-shuntaro-tanikawa-michiko-egashira/
なお、そもそもこの絵本の紹介を受けたのは、その前に私が書いた朝日新聞に載ったある合唱曲作曲家の投稿がきっかけでした。
その記事も併せて送らせていただきます。
信長貴富「初心のうた」~ある傑作合唱曲に寄せられた作曲者の切実なコメントに深く感銘。歌の力で平和を実現できるのか?! | atsuatsutakechan’s blog https //www.atsutake.com/takatomi-nobunaga-song-for-a-fresh-start/
拙文ではありますが、お読みいただけると幸甚です。
〇〇 〇
一言、ご感想などのご返信をいただければこれ以上の喜びはありません。
ブログの本文中にも書かせていただきましたが、あの扉のひまわり畑が非常に気になっております。
何卒よろしくお願いいたします。
〇〇 〇 拝
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作者の江頭さんから届いたメール
全く思いがけないことに、江頭さんからは翌日、直ぐに返事が届いた。
作者からの直々のメールで返事をもらえただけでも感激してしまうのに、その返事の内容が期待を遥かに上回る素晴らしいものだった。
僕が思ってもみなかった「せんそうしない」の制作秘話が、次々と明らかになった。
先ずはこんな丁寧な言葉から始まる
〇〇〇さま
はじめまして。
絵本作家のえがしらみちこと申します。
この度は、絵本『せんそうしない』をブログでご紹介くださいまして ありがとうございました。
驚嘆の制作秘話がてんこ盛り!
続けて、「せんそうしない」の思わぬ制作秘話が披露されていく。
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なぜ出版が2015年だったのか?
疑問の第一は、なぜ2015年というタイミングでこの絵本が書かれたのか?ということだった。ロシアによるウクライナへの侵略戦争が始まる前に作られた絵本だったからだ。
これへの答えは明確だった。
この絵本は、終戦して70年経ち 戦争について次の世代に語れる人たちが少なくなっていることを危惧し 講談社の編集者さんが、谷川さんに絵本の企画を持っていかれたことが始まりです。
なるほど、そういうことだったのか!
2015年は第二次世界大戦というか太平洋戦争が終結してから70年の節目だったのだ。
太平洋戦争が終わったのは1945年。もちろん8月15日である。
それを機に戦争について語れる人が少なくなっていることを危惧した講談社の編集者が、谷川俊太郎さんに企画を持っていった。
次が肝心だ。
その後、詩ができあがり、私に絵の依頼がきました。 編集者さんによると、谷川さんが私の絵本『あめふりさんぽ』をどこかで目にしてくださったらしいです。 すこしレトロ(昭和っぽい)絵と柔らかな印象がイメージにあっていたのではないかなと思います。
これはおもしろい。絵の書き手は、詩人の谷川俊太郎さんが選んだという。
それが江頭路子さんだった。江頭さんの『あめふりさんぽ』が決め手になったというのだ。
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瓦礫の絵について 制作秘話3
次が一番重大なエピソード。この絵本、「せんそうをしない」と繰り返し語られるのに、戦争を思わせる絵はほとんど出てこない。
唯一、見開きの1ページがあるだけだ。だが、これが大変なインパクトを与えると僕もブログの中で書いたのだが、これについては思わぬエピソードがあって、衝撃が止まらなかった。
最初、瓦礫の絵の部分は、谷川さんは「戦争の記録写真をつかいたい」とおっしゃっていました。 優しい絵の中に、リアルな写真があることで残酷さを際立たせたかったのだと思います。
ただ、読んでいる読者(子どもたち)のショックが大きすぎるのではないかと想像し 私と編集者さんとで相談して、瓦礫の絵を提案させていただきました。
でも、なかなか当時の悲惨さを描くことが難しく 何度もなんども描き直して、やっと完成し、無事に出版されました。
これが真相だ。谷川俊太郎さんは戦争の記録写真を使うことを希望したが、子供たちにはあまりにもショックが大きすぎるのでないかということで、講談社の編集者と江頭さんが相談して、瓦礫は江頭さんの絵を使うことにしたという。
これは江頭さんとしては、大変な決断、正に清水の舞台から飛び降りる覚悟だったろうと想像する。
谷川俊太郎さんから、江頭さんが瓦礫の絵を描いてと依頼されても相当なプレッシャーだと思うが、記録写真を使いたいという大御所というか大詩人の谷川俊太郎さんの意向に反しての、絵による瓦礫の提案。
冷や汗がにじみ出る。
江頭さんの、「なかなか当時の悲惨さを描くことが難しく 何度もなんども描き直して、やっと完成し、無事に出版」という言葉に、大変な苦労が痛いほど伝わってくる。
大袈裟な言い回しをされない江頭さんだが、『何度もなんども描き直し、やっと完成し』という、一見さりげない一言が、僕には鉛のように重い言葉となって響いてくる。
これは大変なことだったと思う。正に創作の苦しみだ。
そして出来上がった瓦礫の絵は、インパクトは非常に強いが、前後のほのぼのとした絵と上手く溶け込んで、断裂がない。
それでもあの瓦礫がいきなり出てくるのは相当な衝撃だが、記録写真が挿入されるよりも連続性があって、確かに子供たちにも受け入れやすかったと思われる。
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最大の謎、あのひまわり畑 制作秘話4
僕があの絵本を読んで、最大の衝撃を受けたのは、前後の見開きにある広々としたひまわり畑の絵だった。
あのひまわり畑はどう見たってウクライナの象徴だったからだ。ブログにも書いたように、この絵本はウクライナ戦争の前に作られているのに、なぜこの絵本の中にウクライナを思わせる広大なひまわり畑が描かれたのか?
こういうことだった。
--- 扉の前の前後見返しのひまわり畑は、偶然ウクライナの光景と重なったようで 私自身も驚いています。
ひまわり畑を描いたのは、夏の光景の喧騒と静けさと お花がたくさん咲いていて、華やかで素敵なのだけど、少し怖いイメージが なんとなく「せんそうしない」に似合うなと思い、描いたのでした。
〇〇さんが、ウクライナと重ね合わせて想像してくださって そして、他の絵や文章もふかくふかく読んでくださって、ほんとうにうれしいです。
ありがとうございます。
この種明かしを聞いて、僕はまたまた驚嘆してしまった。
偶然ウクライナの光景と重なったと。
ロシアによるウクライナへの侵略戦争が始まる前に、江頭さんがどうしてあの絵本の中にひまわり畑を描いたのかというと、
『夏の光景の喧騒と静けさと お花がたくさん咲いていて、華やかで素敵なのだけど、少し怖いイメージが なんとなく「せんそうしない」に似合うなと思い、描いた』というのだ。
これは現在もなお続く、「ウクライナの悲劇の予言」とも言うべき一言だ。華やかで素敵だが、少し怖い。あのひまわり畑に襲いかかるロシアの容赦ない砲火が頭の中、そして体中に突き刺さる。
僕があのひまわり畑をウクライナと重ね合わせて想像したことに、作者から感謝されて感無量。これ以上嬉しいことはなかった。
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「人は、なぜ歌うのか」にもコメントもらう
更に江頭さんは、この「せんそうしない」を紹介するきっかけとなった僕のブログ記事についてもコメントしてくれた。
これが何とも嬉しいものだった。
ちょうど、先日「ルックバック」というアニメを観て 「だれも助けられるわけでもないのに、なぜ描き続けるのだろう」という主人公の問いに ハッとさせられ、ちょうど〇〇様のブログ記事「人は、なぜ歌うのか?」にも似たものを感じました。
歌も詩も絵も絵本も すべて祈りでしかないのかな
でも、その祈りに共感する人が集まりつながっていくのかな と、いろいろ考えてしまいました。
(こうやって問いながら続けることに意味があるのかもしれないとも感じています。)
----- いろいろ書いてしまいましたが… ご紹介ありがとうございました!
お知らせ嬉しかったです。
作者ご本人とのメールのやり取りは感動的だ
自分がブログに取り上げた作品の作者ご本人とのやり取りほど嬉しいことはない。ブロガー冥利に尽きる。
しかも作者本人しか知らない制作秘話をたっぷりと聞かせていただき、本当に感動が止まらなかった。
江頭さんには心から感謝したい。
「えほんやさん」の紹介記事(NHK)
なお、元々「せんそうしない」を紹介してくれた僕のブログの読者にして友人のM子さんからは、江頭さんが三島市で開いている「えほんやさん」の紹介記事も教えていただいた。NHKの静岡放送局の記事である。興味のある方はどうかご覧になっていただきたい。
江頭さんの素顔に接することができる貴重なものだ。
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「せんそうしない」江頭さんの取材記事
更にそのM子さんからは、江頭さんご本人による「せんそうしない」に関してのコメント記事も教えてもらった。
ここでも制作秘話が紹介されるのだが、ところどころでご本人自身のコメントとして紹介される。僕が教えてもらったことと重なるのは当然だが、もっと詳しい情報もあるので、こちらも併せてご覧いただけると非常に参考になる。
江頭さんの仕事部屋や創作の現場も見ることができる貴重なものだ。
ちなみに、この記事のことについては、江頭さんとは話題にしていない。僕が知っていることもお伝えしていないし、江頭さんから教えてもらったわけでもない、念のため。
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「せんそうしない」をどうか読んでほしい
まだ実際に江頭さんが絵を描いた「せんそうしない」の絵本を読んだことがないという方は、どうか実際に手にとって読んでいただきたい。
そして小さなお子さんがいらっしゃる方は、この絵本を読み聞かせていただきたいと切にお願いするものである。
前回のブログに書かせていただいたが、「1分で読めるが、記憶は一生」という貴重な絵本である。どうか直接手に取っていただきたいものだ。
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