目 次
マンチェスター・バイ・ザ・シー
映画の基本情報
アメリカ映画 137分
監督:ケネス・ロナーガン
主演:ケイシー・アフレック、ミシェル・ウィリアムズ、カイル・チャンドラー他
「マンチェスター・バイ・ザ・シー」の登場だ。この映画は僕の大のお気に入りで、ギンレイホールで観た全映画の中でも屈指の名作。素晴らしい作品だ。
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一回観ただけでは中々分からない!?
こんなに気に入っているのだが、1回目に観たときにはどうもよく分からなかった。
この映画はただ事じゃないな、何だかものすごい映画なんだが、良く分からない。これは何なんだ!?
というのが最初の僕の偽らざる本音だった。
僕がアメリカの地理や地域事情に詳しくないことが一つの要因。それに思い込みが相乗効果をもたらし、最初から混乱をきたす。
タイトルが先ず悪いと人のせいにする。
というのは、マンチェスターは僕の理解ではイギリスなのだ。
どう見てもアメリカのように見えるし、盛んにボストンのことが話題になる。マンチェスターはイギリスじゃないか、一方でボストンはもちろんアメリカだぞ。アメリカ独立革命の前哨戦になったボストン茶会事件があまりにも有名じゃないか。これは僕にも分かる。
おかしいなあ。どうなっているんだ?いよいよ混乱をきたす。この映画で描かれるのはイギリスなのか?それともアメリカなのか?それが最初から終わりまで気になって気になって、どうにも落ち着かない。映画の舞台がハッキリしないとどうにも辛くなってくるものだ。
そして、もう一つは、今日の映画では常套手段だが、現在と過去とが頻繁に行ったり来たりして、今ここで描かれているのは現在のことなのか、それとも過去のことなのか、非常に混乱してくるのだ。
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こんなアドバイスが最初からあれば
だから、こういうアドバイスを最初からもらうことができれば、最初からとてつもない感動を味わえたはずなのだ。
それは、先ず一つ。
マンチェスター・バイ・ザ・シーはボストン近郊のアメリカの都市
このマンチェスター・バイ・ザ・シーはもちろんアメリカを描いた映画だということ。何とマンチェスター・バイ・ザ・シーというのはマサチューセッツ州にあるアメリカの都市の名前で、イギリスのマンチェスターとは何の関係もない。ボストンの近郊だ。
そして、もう一つは、
今、描かれているのは過去の回想なのか、現在なのかを常に意識して観ること。
そんなに分かりにくいわけでは決してない。
その2点を注意しながら観れば、もう感動は約束されたようなものだ。
ストーリーは
近所づきあいの悪い、中年の男のもとに実の兄の訃報が届く。そして残された息子、主人公にとって甥にあたるわけだが、その後見人を任されることになる。その甥とは小さい時から3人で非常に親しくしてきた間柄。今更、断る理由もないわけだが、彼はどうしても受けることができない。
そこには言葉を失う壮絶な辛い過去が絡んでいた。彼はそのトラウマ、彼の人生を決定的に狂わせてしまったこの重過ぎる過去を克服できるのだろうか?
元々この映画の発案者は?
この映画の作者はケネス・ロナーガンである。脚本を書き、監督も受け持った。この映画でアカデミー脚本賞を受賞し、一躍トップ監督に躍り出た。
実は、この「マンチェスター・バイ・ザ・シー」の原案者は別にいて、それをロナーガンが引き継いだのである。
あの超有名なトップ男優であるマット・デイモンが友人と二人で考えたものを、マット・デイモンがロナーガンに脚本を依頼し、これを監督できるのは君しかいないと監督もロナーガンに引き渡したということだ。
マット・デイモンは「ジェイソン・ボーン」シリーズを始め、数々の名作・傑作に出演している全米でもトップクラスの名優だが、元々は脚本家だったのだ。あの一世を風靡した「グッド・ウィル・ハンティング/旅たち」で主演を張りながら、ベン・アフレックと共にアカデミー脚本賞を獲得していることは極めて有名な話しだ。
そのマット・デイモンが自ら考えだしたオリジナル原案をケネス・ロナーガンに任せ、自らは製作に回ったという話しが妙に嬉しい。
ちなみに、「グッド・ウィル・ハンティング/旅たち」でマット・デイモンと一緒にアカデミー脚本賞を受賞したベン・アフレックは、この「マンチェスター・バイ・ザ・シー」で素晴らしい演技を披露したケイシー・アフレックの兄であり、何とも奇妙な縁を感じさせる映画である。
どこが素晴らしいの?
主演のケイシー・アフレックの素晴らしさに言葉を失うほどだ。ケイシー・アフレックは上述したとおりあの有名なベン・アフレックの弟だが、心に苦悩を秘めた深い表情とやり切れない絶望感をさりげなくにじます演技力は傑出していて、兄は遠く及ばない。僕は彼のマスクにもゾッコンだ。本当に魅力的な俳優。この作品でアカデミー主演男優賞を筆頭に、この年の名だたる主演男優賞を軒並み独占。当然のことだ。
深く絶望した人間を変に励ましたり、再起させたりするのではなく、その絶望の淵にまで一緒に落ちていって優しく寄り添うような、深い、とてつもなく深い愛情に満ちた映画。
とんでもない映画なのである。
今、どうしようもない絶望と深い悲しみに陥っている貴方に、どうしても観てもらいたい。この映画を観てもらえれば、確実にその絶望は楽になるはずである。
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絶望と深い悲しみへの処方箋
そんな絶望とやりきれない悲しみに効く処方箋がこれだ。これを観てもらって救われる人間が一人でも多く現れてほしい。悲しみや苦悩で絶望に陥ったときにはこれを観てほしい。きっと救われて、生命を救うかけがえのない映画となることだろう。
これはどうしても観てもらいたい映画なのである。
本当にこの映画の深い味わいと真の救済は唯一無二のものだと、ただただ感嘆させられる。