野村克也という傑出した指導者

野村克也に少しはまっている。前回このブログでも取り上げた「ヤクルトスワローズ論」を読んで以来のこと。野村克也がどういう人生を歩んできたのかについては、「ヤクルトスワローズ論」の中でかなり赤裸々に語られている。これは正に野村克也自伝という色彩が濃厚な一冊であった。

野村克也は自身が日本のプロ野球史の中でも屈指の名バッターにして名捕手という傑出したスーパースター。監督兼任選手だったことも重要だ。

9年間に及ぶ評論家時代に野球理論はもちろん、野球以外の優れた本をがむしゃらに読んで教養を身に付け、ヤクルトスワローズの監督に就任してからは、阪神タイガースの監督時代には実績を残せなかったが、野村データ野球を推し進め、野村再生工場など、日本のプロ野球を代表する名監督となったことは知らない人がいない。

日本のプロ野球と監督のあるべき姿を抜本的に変えてしまったとてつもない指導者と言って間違いないだろう。

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野村克也の著作は膨大な量があるが

積み重ねると野村克也の身長を超える量の著作があるらしい。ザッと調べてみると、実はかなり似たような内容が多く、手を変え品を変え、同じような内容の本を次々と出版している感じもなくもない。

とは言っても、僕もかなり読んでみたが、どれを読んでも無駄になるようなものは決してない。

野球の技術論そのものをかなり詳細に突っ込んで書いてあるものも多い。マー君こと田中将大が熟読しているという「野村ノート」がその代表例だ。

大多数は野球を通じて語る組織論、意識改革論、リーダーシップ論、人材育成論などのマネジメントに関わる内容である。

野球の技術などには特別な興味のない僕が専ら読むのは、もちろん後者のマネジメントに関わる本だ。

かなりの量が出ているが、その中で最も充実していて、お勧めできるのが今回紹介させてもらう「野村メソッド」というわけである。

本の表紙。「最強の組織」をつくるというキャッチフレーズが単刀直入でいい。赤い帯も本書の核心を捕えていて、読みたくなってしまう。
裏表紙のキャッチコピーも簡潔ながらも、本書の核心に迫るものだ。

「野村メソッド」の概要と作り

この本では、野村克也のマネジメント術と哲学が、100編書かれている。

「野村克也の理論と哲学100」といった体裁になっているのが最大の特徴である。

その100本の野村克也の理論と哲学が全て見開き2ページに展開されている。これが非常に適当な分量(1,200字弱)で、本質を突きながらもコンパクトにまとめられていて、実に読みやすい。

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どのように展開されるのか

100本を通じて、先ずは野村克也が一番言いたいこと、訴えたいことを簡潔に示した上で、その結論を導き出すに至った具体的なケースをプロ野球の野村克也自身が体験したことを中心に、できるだけ具体的に紹介してくれている。事例紹介、ケーススタディのような感じだ。

この具体例が、野村克也自身の体験を始め、プロ野球界の著名な選手たちや監督たちのエピソードで彩られるので、野球に詳しい読者ならワクワクドキドキの連続となることは必定。いわば球界のトリビアが明かされるような楽しみとなる。

特別に熱心なファンではないものの、曲がりなりともプロ野球ファンの一員ではあるといったレベルの僕が読んでも、実に楽しいし、興味が尽きない。

その具体的なエピソードから野村克也の理論、哲学が更に膨らんで、展開していくところが読み応え十分だ。

なるほどそうか、そうだなと説得されてしまうのである。

本文はこんな感じ。見開き2ページに1編(メソッド)ずつ簡潔にまとめられている。1編は大体1,200字弱でとても読みやすいものだ。

どんな内容が書かれているのか

「野球を通じて語る組織論、意識改革論、リーダーシップ論、人材育成論」ということになるのだが、実際に目次を紹介してみよう。こんな内容である。

全体は5つの章に分かれている。特にハッとするタイトルをいくつか抜き出してみる。

第一章「最強の組織のつくり方」・・・・21編
  4 適材適所が組織力を左右する。
  8 感性が組織に命を吹き込む。
  9 新しい血の導入が組織変革する。
 19 データには心理を盛り込め。

第二章「いかに意識を変革するか?」・・20編
 22 心が変われば、人生は変わる。
 29 自分のために組織はあるのか、組織のために自分があるのか。
 34 悩み、苦しむことを楽しめ。
 38 結果ではなく、プロセスを重視せよ。
 40 言い訳は進歩の敵。

第三章「勝てるリーダーの条件」・・・・20編
 43 手を抜くな。見るべき人が必ずどこかで見ている。
 59 腹心の部下は人柄と志の高さで選べ。

第四章「指導者の仕事と役割」・・・・・19編
 64 固定観念や好き嫌いを捨て、公平に判断せよ。
 67 不満を理想の実現へと導け。
 76 今は嫌われても、いつか感謝されるほうを選べ。
 80 財を遺すは下、仕事を遺すは中、人を遺すは上なり。

第五章「人材育成の極意」・・・・・・・20編
 85 短所を克服しなければ、長所は宝の持ち腐れ。
 87 「失敗」と書いて「せいちょう(成長)」と読む。
 89 再生の極意は何か。愛である。
 91 迷ったら、困難なほうを選べ。
 96 人間の最大の罪は鈍感である。
100 変わることは進歩である。

 どうだろうか。思わず読んでみたい気になるのではないか。こんなテーマが100本、それぞれ見開き2ページで展開されている。

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野村克也の神髄がここにある

野村克也が自らの貴重な経験と勉学によって構築した現実的な理論と哲学。組織とリーダーシップ論、人材育成を語らせてこれ以上分かりやすく、具体的な場面で役に立つものはないと思われる。実に傾聴に値すると思う。

組織を強化し、意識改革を迫り、人を育てて結果を出すことを求められている全てのトップと管理職には、必読の一冊。

ただし、気をつけてほしい。簡潔にコンパクトに書かれているとは言っては、ここに書かれている本質はかなり深く、そのエッセンスや言葉だけを表面的に流用しようとしても、決していい結果にはならないと注意を喚起しておく。

ここに書かれていることを是非とも役に立ててほしいと切に望むが、本書をじっくりと読み込み、野村克也の長年に渡る苦労と地道な努力に思いを馳せないと、これらの箴言は本当には心に響かず、身に付かない可能性がある。

簡潔にまとめられた本書をじっくりと読み込むことをお勧めしたい。そして、先に紹介した「ヤクルトスワローズ論」に書かれた野村克也の自伝部分はどうしても読んでもらう必要がある。

この機会に野村克也の箴言の数々に触れてみてはいかが。野球に興味がない人にも是非お勧めしたい。十分に楽しめ、役に立つことを約束する。

 

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