素晴らしい内容で、深い感銘を受けた

これは素晴らしい本だった。出口さんの本を色々と読んできたが、その中でも内容の濃さと読んだ後での感銘の深さは、屈指のものだと感じている。

『「思考軸」をつくれ  あの人が「瞬時の判断」を誤らない理由』という本である。

決して長くはない、どちらかというと短い部類に入るものだが、その内容は盛りだくさんで、その説得力と納得感、感動の深さは分厚い本にも勝るとも劣らない。

これは出口さんとの面談に先立って一気呵成に読み終えた本の2冊目に当たるもの。こちらも集中的に読むことができて、実質的にはほぼ丸一日で読み終えることができた。

読み終えたのは2024.2.4(日)だった。前の日には「本の『使い方』」も、丸一日で完全に読み終え、結局僕は、この土日という週末の2日間で、毎日1冊ずつ2冊の出口さんの本を読み終えたことになる。

実に楽しく満たされた時間となった。

そして、更に本日、この本を記事にするに当たって、ブログを書き始める直前にもう一度読んでみた

やっぱり深い感銘を受けた。その感銘は二度読んだことによって、更に深まったように感じている。

紹介した本の表表紙の写真
これが表表紙である。出口さんが非常に若々しい。
紹介した本の裏表紙。
裏表紙の帯には、本書の巻末に掲載されている取材者による解説の一部が引用されている。これがまた中々の読みものであった。

僕が読んだ出口さんの本のベストスリーに入る名著

感動しながら夢中になって読ませてもらったが、これは僕が読んできた出口さんの全ての本の中でもベストスリーに入れたいものだ。

この本は、いわゆる自己啓発本というか、マネジメント系の本である。著者の出口さんの言葉を借りれば「ビジネス書」に分類される。

僕が読んだ出口さんのビジネス書には「いま君に伝えたい知的生産の考え方」という非常に素晴らしい1冊があり、これは先日このブログでも配信している。

僕はこの「いま君に伝えたい知的生産の考え方」という本にすっかり夢中にさせられて、僕の職場でも紹介し、色々なスタッフに読んでもらっているのだが、今回の『「思考軸」をつくれ あの人が「瞬時の判断」を誤らない理由』は、それに勝るとも劣らない感銘を受けたので、先ずはそのことを最初にお伝えさせていただく。

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出口治明『「思考軸」をつくれ』の基本情報

発行は英治出版株式会社。発行は2010年7月10日で、僕が持っているものは2012年6月10日の第1版第2刷である。

本文のページ数は「おわりに」を含めて187ページ。それほど厚い本ではない。その後に、「出口治明はパンクである―取材者からのメッセージ」がちょうど10ページ付いている。

更に巻末には「軸づくり」に役立つ本一覧と出口さんが設立したライフネット生命のマニフェストが全文掲げてあるのがユニークだが、これが非常に素晴らしいもの。それらを全て含めて、最終ページは206ページとなる。

出口さんの本はいつも目次が非常に充実しており、この目次を眺めるだけで何が書かれている本なのかが明白になるのだが、本書も例外ではなく、非常に充実した目次となっている。

例によって、この目次を掲載させてもらう。

全体の構成と目次の内容

はじめに 私が「0.1%」に賭けられた理由
序章 ベンチャー生保の立ち上げにかけた想い

第1章 5つの「思考軸」と大切にすべきこと
第2章 森を見る「タテヨコ思考」のすすめ
第3章 「多様なインプット」で直観と論理を磨く
第4章 「違った人」をいかすリーダーシップ
第5章 「勝率100%」の真っ向勝負
第6章 私たちが、いまいるところ

おわりに 「悔いなし、遺産なし」—自分の頭で考え続ける

出口治明はパンクである—取材者からのメッセージ
「軸づくり」に役立つ本一覧(歴史を中心にした20冊) 

目次に載っているものは以上。その後に貴重なものが掲載されている。巻末の付録のような扱いだが、これが重要だ。

ライフネットの生命保険マニフェスト

章だけを列挙すると、このとおりなのだが、本書の目次はそれぞれの章が更に細分化されており、それがそのまま表示され、ユニークなことに各章を貫いて、チャプターの通し番号が振られている。

少ない章でも3つ、多い章では9つものチャプターに分かれ、全体では最後の「役立つ本一覧」も含めると何と198本もある。

目次の一部の写真
こんな感じで各章が分類され、章をまたいで通し番号が付いている。

 

ライフネットのマニフェストを加えると199本となり、ほぼ200項目だ。全体で206ページの本が、約200のチャプターに分類されていることになる。

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60歳でベンチャー企業を設立した際の話

出口治明は現時点では60冊を下らない非常にたくさんの本を書いており、ビジネス書の他にも歴史、特に世界史に関する本が多い。また元々の専門分野である保険に関する貴重な専門書も少なくない。

そんな多数の著作の中でも、本書は比較的早い時期に書かれたものである。初版は上述のとおり2010年。今から13年程前のことだ。

本書のテーマと狙いは極めて明確だ。出口治明は2006年にベンチャー企業のネットライフ生命保険を設立した。
正確に期すと、
2006年にネットライフ企画株式会社を設立、代表取締役就任。
2008年4月、生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険株式会社に社名を変更、同社代表取締役社長に就任。

本書が発刊されたのは2010年のことであり、ライフネット生命保険株式会社の誕生から2年後に発行された本ということになる。

正に本書は60歳にしてベンチャー企業を立ち上げ、我が国の生命保険史上、独立系のベンチャー企業として初めて生命保険会社の免許の取得を成功させた出口治明の、この時の起業とそれを成功に導いた経緯を伝え、それを通じて、仕事の進め方、リーダーシップの在り方などを縦横無尽に語ったものである。

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単なる出口治明の成功物語のはずがない

と言って、本書が出口治明のベンチャー企業立ち上げの成功譚を自慢話風に伝えるもではないことは当然だ。

昨日(2024.2.28)配信したばかりの「本の『使い方』」の中でも、出口治明自身がいわゆるビジネス書に対して否定的な見解を縷々展開させており、そんな自身のベンチャー企業立ち上げ成功の自慢話しの本を書くわけはない。

この本は、出口治明自身のベンチャー企業の立ち上げという経験を踏まえながらも、「風が吹いたときに凧に乗る」ために日頃から準備をしておくことが大切で、そのためには自分だけの「思考軸」をつくり、それを磨いていくことが必要だと強調している。

その発想には心の底から納得できるし、本当に読んでいておもしろくてたまらなかった

出口さんが訴える「思考軸」をつくるとは何?

出口さんが一番強く訴えることはこういうことだ。

出口さんが訴えるエッセンス

思うようにならない人生だからこそ、「風が吹いたときに凧を上げる」、そのための準備はしておくべきだ。
「風が吹いたときに凧を上げる」ためには、自分だけの「思考軸」をつくり、それを磨く必要がある。
閉じた社会に変革を起こすことができるのは、内にいながらもその価値基準に染まり切らない、「自分の軸」をもった人だけだ。
今、私たちに求められているのは「すべての物事を原点から考え直す」こと。原点から考え直すためには、私たちは一人ひとりがものごとの本質を見る目をもち、自分のなかに、考えるための軸をつくらねければならない。

出口さんの問題提起

本書の中で、出口さんは読者を挑発するかのように、次々と厳しい問いかけと問題提起を繰り出して、全く新しい提案を突き付けてくる。これが実に強烈で、僕は改めて出口さんを深くリスペクトするしかなかった。大いに納得できるものばかりなのである。

その中からいくつか列挙してみる。

1.「成功の法則」とされてきたことは、すべからく役に立たないものと思った方がいい。その上であらゆることをゼロベースで考え、新たな価値体系を構築していく能力が求められている。

2.私は「直感で決める」ことを大切にしている。直感というのは「何も考えずに決める」ことではない。人間の脳は問題に直面した瞬間に、頭の中に蓄積されている情報を高速でサーチし、最適な答えを出すようにできている。つまり、脳が最速で必要な情報処理を行った結果が「直感」だ。

直感の精度はその人のインプットの集積で決まる。だからこそ、日頃から読書をしたり、さまざまなジャンルの人に会ったりして経験の幅を広げ、インプットの量を増やしておくことが大切なのだ。

3.私たちに求められているのは、全てをゼロから考え、新しい価値体系を再構築していくことだ。そのためには、毎度時間をかけて一つひとつのことにじっくり取り組むなどという悠長なことを言っている余裕はない。猛スピードで考え、次々と試行錯誤を繰り返していかなければならない

4.一番まずいのは、課題に対して優柔不断な態度を取ること。宙ぶらりんの時間は何も生み出さない。仮にでも結論を決めてしまえば、それが良かったのか悪かったのかを嫌でも考えるようになるので思考が深まる。

5.スピードは、その人の生産性を決定づける重要な要因。同じ量の仕事(=能力)ならば、スピードが速ければ早いほど、相手に与えるインパクトは強まる。

「インパクト=仕事量×スピード」

6.日本は明らかに停滞している。この状況を招いた要因は、リーダーの不在だと思う。今の日本には、前例のない局面に立たされても動じず、明確なビジョンを示してその方向に人々をグイグイと引っ張っていくことのできる、問題解決能力と力強さを兼ね備えたリーダーが政界にも経済界にも見当たらない。

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「思考軸」をつくるためにはどうするのか?

これについても、出口さんはかなり具体的にノウハウを開示してくれている。ありがたいことだ。

色々な本で、出口さんが繰り返し強調していることである。

ここで簡潔に整理しておきたい。

これが出口さんの日頃から最も大切にしている「出口哲学」だ。

出口さんがこれを哲学と呼ぶことを許してくれるかどうかは分からないが。

出口哲学

失敗しないためには、何事も自分の頭で考えなければならない

それに成功したとしても、今度は自分の中に新たな座標軸をつくらなければ次の判断ができなくなったしまう。

「自分の軸をつくる」には「森の姿」を見る。つまりは今の自分、今の会社、今の日本がどんな位置にあるのか、今までよりも一歩引いた視点で俯瞰して見る

「森の姿」を見るための方法は二つ。

① 歴史から見ること=タテ思考
② 他の国や地域から見ること=ヨコ思考

このタテヨコ思考こそが、自分なりの軸をつくるための最強の武器になる。

出口さんの哲学には、この「タテヨコ思考」と合わせて、もう一つ、「数字・ファクト(事実)・ロジック」というのがあるのだが、本書の中には直接それに触れる部分はない。

だが、「おわりに」の中に、ハッキリと書いてあったので、これは強調しておきたい。

更に「人・本・旅」というのもあるのだが、本書の中には出てこないので、またいずれかの機会にお伝えしたい。

この本で皆さんに伝えたかったこと

常識に囚われず、数字と事実とロジックを武器に自分の頭で考えるクセをつけてほしい

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出口さんが考えるリーダーシップ

本書にはリーダーシップについて出口さんの考え方が展開される。

出口さんはいま、あらゆる組織が「閉鎖系」から「開放系」に移行することを迫られており、急激に変化する世界の中でブレずに判断を下し、組織をまとめあげて臆することなく戦える「真のリーダーシップを発揮できる人材」が必要とされるという。

真のリーダーシップとは、どういうものか?

出口さんは「これがなければリーダーたり得ない」という要素として3つあげている。

真のリーダーシップとは

① 「やりたいことをもっている」こと。
「これがどうしてもやりたい」という明確な「旗」を掲げられること。

② 「旅の仲間を集められること」⇒「仲間を集める力」=共感力 

③ 「旅の目的地までチームをまとめ、引っ張っていくこと」=統率力

ライフネットのマニフェストに心から感動する

本書の最後に出口さんが考えたライフネット生命の実際のマニフェストが掲げられている。

これは僕は初めて本書を通じて読んだが、読んで驚いた。ビックリ仰天してしまった。

こんなものが存在し、新たなベンチャー企業が誰でも良く知っている生命保険業界に殴り込みをかけたのか、と心の底から感動した。

すごい。正に制度が考え出された当時の原点に立ち帰って、既存の価値感を根底から覆してしまうものだ。

ここに引用することは避けたい。

本書を実際に手にして読んでもらうか、ネットで検索すれば、今でもこのマニフェストが生きているのかどうか知らないが、ヒットはするだろう。

是非とも実際に読んでいただきたいものだ。

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一人でも多くの人に読んでもらいたい名著

これは本当にいい本だ。感動が収まらない。出口さんが60歳にして新たにベンチャー企業を設立するに当たって心がけていたもの、その最も重要なマインドをありのままに伝え、後進にもそのマインドで組織を、日本を、世界を変えてほしいという熱い想いが痛いほど伝わってくる。

決して難しいことが書かれているわけではないことが素晴らしい。

誰にでも良く理解できる非常に平易な言葉を用いて、分かりやすく自らの考えを伝え、若い人たちに改革を求める本書。深く感銘し、感動に値する貴重な1冊だ。

一人でも多くの人に読んでいただきたいものだ。

 

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