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鬼才ギレルモ・デル・トロの最新作に興味津々
僕が大注目しているスペインの鬼才ギレルモ・デル・トロ監督による最新作の「ナイトメア・アリー」は、どうしたって観ないわけにはいかない。
ギレルモ・デル・トロ監督と言えば、「シェイプ・オブ・ウォーター」で、2018年第90回のアカデミー賞で見事、作品賞と監督賞を獲得し、一躍有名になったが、メキシコが生んだ若手天才映画監督3人衆の中でも、一番古くから知られていた大監督である。
「シェイプ・オブ・ウォーター」のことは、このブログの中でも「ギンレイホールで観た映画を語る」シリーズの中でかなり詳しく触れているので、参考にしてほしい。
現代の映画界を牽引するメキシコの天才3人衆
以前にも何度か紹介して来たが、そのメキシコの若手天才3人衆とは、ギレルモ・デル・トロとゴンザレス・イニャリトゥ、そしてアルフォンソ・キュアロンの3人だ。
その3人は、近年のアカデミー賞の主要部門受賞の常連で、数年間に渡ってこの3人が代わる代わる作品賞と監督賞を独占したエピソードなども紹介してきた。
年齢もほぼ同じ50代半ば。3人で共同して映画会社を創設しているあたり、本当に将来が恐ろしいばかりの鬼才たちである。
どうしてメキシコというどちらかというと発展の遅れた国で、ここまで優秀な能力を持った映画作りの天才たちが揃って誕生したのか、近年、映画を巡ってこんなに興味を惹かれるテーマはない。
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デル・トロ監督といえば
メキシコが生んだ天才3人衆の中でも、1番の兄貴分はやはりデル・トロだ。
「シェイプ・オブ・ウォーター」の大成功もさることながら、かつての「パンズ・ラビリンス」という素晴らしい作品で世界中の映画ファンの心を鷲掴みにした。
スペイン内戦を舞台にした感動的なあの映画は、本当に素晴らしかった。
そんなデル・トロ監督の最新作。期待するなと言う方が無理である。
この映画は、今は閉館となってしまった僕がこよなく愛した名画座のギンレイホールでも取り上げられた作品だ。
あいにくコロナの感染もあり、僕は残念ながら観に行くことはできなかったが、パンフレットがどうしても欲しくなって、購入した経緯がある。
実際に観ていない映画のパンフレットを購入するということはしない、ということを貫いているのだが、この映画のパンフレットは観ていないにも拘らず購入したわけだが、これはいずれ必ず鑑賞するつもりでいたことは、言うまでもない。
ブルーレイが発売され次第、即購入し、この度、漸く観ることができた。
映画の基本情報:「ナイトメア・アリー」
アメリカ映画 150分(2時間30分)
2022年3月25日 日本公開
原作
ウィリアム・リンゼイ・グレシャム『ナイトメア・アリー 悪夢小路(英語版)』
監督:ギレルモ・デル・トロ
脚本:ギレルモ・デル・トロ、キム・モーガン
出演:ブラッドリー・クーパー、ケイト・ブランシェット、トニ・コレット、ウィレム・デフォー、リチャード・ジェンキンス、ルーニー・マーラ、ロン・パールマン、メアリー・スティーンバージェン、デヴィッド・ストラザーン 他
撮影:ダン・ローストセン
キネマ旬報ベストテン:2022年度 第96回 第12位 読者選出ベストテン第11位 いずれも惜しくもベストテンからはみ出してしまっているが、ほぼ次点。評論家からも観客からも高く評価されたことが分かる。
ストーリーは話したくないのだが
これはミステリーというか、サスペンスあるいはオカルトに属する作品だ。
こういうものは、極力先入観と事前情報なしで観た方が楽しめることはもちろんだ。
ナイトメアが「悪夢」であることは直ぐに分かるから、少し怖そうなミステリーくらいの事前情報で済ませた方がいいに違いない。
でも、それではこのブログの意味がないので(笑)、ネタバレにならない必要最低限のストーリーを紹介させてもらう。
ごく簡単なストーリー紹介
いきなり主役のスタンが誰かを殺し、その死体ごと家に火をつけるという過激なシーンからスタートする。
そして流れ着いた場所がいわゆる「見世物小屋」。そこには獣人や電気人間など様々なフリークスたちがいたが、ここで真面目に働き、霊能力を発揮する手品のようなものを身に付けながら、仲間の信頼を得ていく。
やがて電気人間と恋に落ちて、霊媒者として一攫千金を夢見て2人で小屋を抜け出すのだが、果たしてスタンの野心は叶うのだろうか。
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アリーは人名ではなく小路(alley)
「ナイトメア・アリー」のアリーは、人の名前、ヒロインの見る悪夢かなと思いがちだが、そうではない。アリーはalleyで、小路を意味する。つまり「悪夢小路」ということになる。
ウィリアム・グレシャムの原作はかなり有名なもので、今回の作品は2度目の映画化となる。
最初の映画化は1947年(第二次世界大戦終結から2年後)の「悪魔の往く町」だという。
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デル・トロ監督の剛腕ぶりに圧倒された
中々素晴らしい出来栄えだと思う。映画全体を覆うトーンが一貫していて、気が滅入ってくるダークな雰囲気が、決して途切れることがない。
映画全体が正にナイトメア、「悪夢」であることが良く伝わってくる。
小屋を出て、都会に移ってからも、全体の色調は変わらない。スタンの心象風景なのかもしれない。
このダークで陰影に富んだ世界の構築は正にデル・トロの真骨頂と言うしかない。その剛腕ぶりに圧倒される。
デル・トロ得意なファンタジーではないドラマ展開
それでいて、この映画はデル・トロが元々得意としている「人間ではない」存在を描くファンタジーではなく、あくまでも真っ当な人間ドラマなのである。
デル・トロがファンタジー的な要素を一切排した作品はこれが初めてではないだろうか。
こういうものも普通に作れるんだと、不思議な感動がある。
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名優勢揃いの絶品の俳優陣
俳優陣の演技合戦も大きな見どころである。
スタンを演じたブラッドリー・クーパーはアカデミー主演男優賞にノミネートされること4回に及ぶ素晴らしい名優だ。イケメンにして演技力も申し分のない実力者。
イーストウッド監督の「アメリカン・スナイパー」やレディ・ガガと組み、自身初の監督も務めた「アリー/スター誕生」など、素晴らしい映画ばかりである。
今回も、犯罪を犯した金に飢えた野心に満ちた男でありながらも、誠実さと人間臭さも感じさせる絶妙な演技で、魅せる。
恋人役の電気人間を演じたのは、ルーニー・マーラ。この人はD・フィンチャー監督の「ドラゴン・タトゥーの女」などクセのある屈折した役柄を演じることが多かったのだが、ここでは可憐なヒロインを演じて胸が締め付けられる。
そして何と言っても抜群の存在感を示すのが、アカデミー主演女優賞と助演女優賞で2度のオスカーに輝く今や大女優のケイト・ブランシェット。
錚々たる映画に続々と出演し、美貌と演技力で周囲を圧倒。ここでもブラッドリー・クーパーと実に見応えのある四つ相撲を繰り広げてくれる。
さすがに素晴らしい。
他にもウィレム・デフォーやトニ・トニコレットなど名優が目白押し。
ちなみに、ポスターやブルーレイのジャケ写、パンフレットなどの表紙を飾る写真を見ても分かるように、ケイト・ブランシェットとトニ・コレットは実に良く似ていて、最初は区別がつかず、同一人と思って観ていたので、注意してほしい。
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過去を隠して這い上がろうとした野心家の顛末
これが映画のテーマ。
とくと観てその顛末を見届けてほしい。
端末の内容については、一切触れないことにしておく。
第一級のミステリーにして人間ドラマ
これは思わない展開に興奮必至の第一級のミステリーにして、実に見事な人間ドラマでもある。
じっくりと観ていただき、ギレルモ・デル・トロが作り上げたダークな世界に浸って、優れた映画ならではの醍醐味を心ゆくまで満喫していただきたい。
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