観逃してはいけないちょっと特殊なサスペンス映画!?

何とも形容が難しいちょっと特殊な映画を観た。昨年(2021年)のアカデミー賞(第95回)で脚本賞を受賞した話題作である。

すごい映画とか、衝撃を受けるとか、打ちのめされるとか、そういう重い形容はいかにもそぐわない。と言って、ここに描かれるのは紛れもなく社会性も持ち合わせたものすごく重いテーマで、深刻な内容を含んでいる。だが、映画そのものはどこまでもオシャレで軽やかで、繊細でもあり、その重いテーマにあまり似つかわしくない。

むしろコメディに近い部分も多く、ロマンチックラブロマンスの様相も帯びるいかにもキュートな映画。使われる音楽もまさしくポップ調で、ブリトニー・スピアーズのToxicの使用も話題になっている。衣装にも凝っていて、いかにも流行の最先端を行くようなオシャレな映画なのである。

だが、これは見事なサスペンス映画であり、スリラーと言った方がいいかもしれない怖い映画でもある。何とも形容が難しい。

ハッキリと言えることは、とにかくめちゃくちゃおもしろく、観ていて身を乗り出したくなるようなシーンの連続で、映画的な興奮に満ち溢れていること。アカデミー脚本賞の受賞も納得の超一級の素晴らしい映画なのである。

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映画の基本情報:「プロミシング・ヤング・ウーマン」

アメリカ映画 113分  

2021年7月16日  日本公開

監督:エメラルド・フェネル

脚本:エメラルド・フェネル(アカデミー脚本賞)

主演:キャリー・マリガン、ボー・バーナム、アリソン・ブリ―、クランシー・ブラウン   

監督・脚本のエメラルド・フェネルはイギリス出身の女優で、この作品が初監督となる。いきなりアカデミー脚本賞を受賞するという快挙を成し遂げた。

紹介した映画のジャケット写真
妙に奇抜なジャケット写真。これは一体何だろうと興味をひかずにはいられなくなる。
ブルーレイディスクの本体写真
ブルーレイディスクの本体に印刷された写真。これがキャリー・マリガンの横顔。

どんなストーリーなのか

今回は極力、ストーリーの紹介は差し控えたい。とにかく色々な要素がギッシリと詰め込まれた映画で、しかも二転三転するストーリーの奇想天外さが最大のおもしろさでもあるので、事前情報や先入観をできるだけ排除して映画と対峙することをお勧めしたい。

最低限のストーリーだけ触れておく。

ある若い女性が深夜バーで泥酔し、前後の見境がなくなる様子を見た周りの男が下心を持って介抱するそぶりで近づき、自宅に連れ込んで事に及ぼうとすると、いきなりしらふになって、その男を成敗するということを毎晩続けている女が主人公。

彼女の狙いがどこにあるのかさっぱり分からないのだが、やがてその狙いと彼女の信じがたい素性が少しずつ明らかになってくる。そしてあることがきっかけとなって、彼女の行動は更にエスカレートしていくのだが・・・。

ここまでにしておこう。後はとにかく実際に直接映画と対峙していただくことを切望する。

なお、映画のタイトルの「プロミシング・ヤング・ウーマン」というのは「前途有望な若い女性」という意味のようである。これもあまり気にしない方がいいかもしれない。

紹介した映画の裏ジャケット写真。
裏ジャケット写真。余計な解説が色々と書いているが、読むべからず!! 映画を観終わった後で読んでください。

最初は戸惑うが、ドンドン引き込まれていく

この作品は超話題作なのである。昨年(2021年)のアカデミー賞において、脚本賞という重要なオスカーを見事に獲得しているし、今月4日に発売されたばかりのキネマ旬報ベストテンにおいても外国映画ベストテンの第3位に輝いている。読者選出ベストテンにおいても同じく第3位という快挙を成し遂げている。つまり傑作として極めて高く評価されている映画なのである。

僕はその結果を知って、どうしても観たくなり、既に発売されていたブルーレイを直ぐに購入して、早速観たと言うわけだ。

その高い評価の割に冒頭は良く分からない。しばらく観ていても、そのおもしろさがどこにあるのか分からずに戸惑ってしまう。何だこれは?どこがおもしろいんだ!?という感じだったが、それも束の間、次から次へとアッと驚く展開があって、ドンドン引き込まれ、やがて画面に釘付けになってしまう。

本当に見事な展開なのである。実に良くできたシナリオ。アカデミー脚本賞の受賞もむべなるかな。こういうめちゃくちゃおもしろい展開に身を委ねることができるのが映画を観る醍醐味である。そんな幸福感を満喫させられる。

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監督・脚本のエメラルド・フェネルのこと

この見事なオリジナルのシナリオを書いたのが演出も受け持ったエメラルド・フェネルという人。イギリス出身の女性である。元々は女優であり、6本ほどの映画とNetflixの「ザ・クラウン」というドラマシリーズの出演で有名な方のようだ。御年まだ36歳という若手がこれだけのシナリオをオリジナルで書き上げ、それを自ら演出したことは少し信じがたいほどである。

その監督としての力量だが、とても初めての監督作品とは思えない素晴らしい出来栄えで、僕は大いに気に入っている。絶妙な省略法が何とも見事で、思わず舌を巻いてしまう。時間軸をホンの少しずらすだけで、どれだけの映像的な効果と緊張感を生みだすかと言う見事な見本がギッシリと詰まっていて、これが初めての監督作品とは到底思えないのである。印象的なカメラワークも頻繁に出て来て、映画的な興奮が収まらなくなってしまう。

エメラルド・フェネルのこれからの活躍に目が離せない。

主演のキャリー・マリガンのこと

主演のキャリー・マリガンが素晴らしい。キャリー・マリガンはもう既に何本もの評価の高い映画に出演している若手女優の中でも特に将来を嘱望されている人気女優である。「17歳の肖像」でデビューし、いきなりアカデミー賞主演女優賞にノミネートされ、注目された。僕はその後のライアン・ゴズリングの「ドライブ」に出てきたゴズリングが命をかけて守り抜く若い未亡人役を観てすっかりファンになってしまった。ギンレイホールでもキャリー・マリガンが出演する映画が何本も上映されており、すっかりお馴染みの女優なのだが、今回の「プロミシング・ヤング・ウーマン」では今までのキャリアからは想像できない新境地に挑み、見事に才能を開花させた感がある。

様々な顔を持った複雑な女性を演じるために、これが同一人物なのかと信じられないような変身ぶりを発揮する。それに応じて見事なまでに服装や髪形、メイクも変幻自在。これは観ていていかにも楽しい。

年齢は36歳ということで、奇しくも監督・脚本のエメラルド・フェネルと同年齢なのである。

この映画は「女性の、女性による、女性のための映画」であり、それを36歳の二人の若い女性が作り上げたことに喝采を送りたい。本当に素晴らしいことだと思う。

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3月にギンレイホールでの上映が決まっている

僕はこの映画を家のテレビでブルーレイで鑑賞して大いに満足したのだが、同時に何としても映画館の大画面と大音響の中に身を委ねたいと切望しないわけにいかなかった。

それが何と、我が愛するギンレイホールでの上映が決まっていることを知って、狂喜乱舞。

3月5日(土)~18日(金)の2週間である。しかも併映は僕が熱愛しているあのリドリー・スコットのこれまた超話題作の「最後の決闘裁判」である。もう今から興奮が抑えられない。

僕は4カ月間も脊柱管狭窄症でまともに歩くことができず、ようやく快復してきたかと思って喜んだのも束の間、今度はこのオミクロン株の大流行(新型コロナ)のせいで映画館に行くことができなくなって、もうかれこれ5カ月間以上、ギンレイホールに行くことができない状態で今日に至っている。

ギンレイホールでの上映はちょうど1カ月後である。何とかそれまでにこの爆発的な感染状況が収束していることを切に願うばかりである。

是非とも映画館の大画面と大音量で満喫していただきたいとこころであるが、ブルーレイでもこの映画の素晴らしさと興奮は存分に味わえることは保証する。

これだけおもしろく、興奮させられる映画はそうあるものではない。軽いタッチで描かれながらもそのテーマは深く重い。才能に満ち溢れた若い女性たちが作り上げた超一級の映画を存分に味わってほしい。

すごい映画体験になることを約束する。

 

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