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シベリウスの最高の指揮者ベルグルンド
すごいブルーレイを試聴した。あのシベリウスの全交響曲の演奏会のライヴ映像。指揮者はパーヴォ・ベルグルンド。
シベリウスのファンはもちろん、少しクラシック音楽に詳しい人なら、パーヴォ・ベルグルンドのことを知らない人はいないだろう。
世界最高のシベリウス指揮者。シベリウスの交響曲の数え切れないほど数多ある演奏の中で、唯一無二の最高の演奏がベルグルンドが指揮したものなのである。
パーヴォ・ベルグルンドはシベリウスの7曲の交響曲を全て収めた全集を生涯に3回録音しているが、そのいずれもが非常に高く評価されている。
正にシベリウスの交響曲を指揮するために生まれてきたような指揮者。古今東西あまたの作曲家と指揮者がいるが、これほど固く結びつき、しかもその演奏が最高と称えられる例も他には滅多にない。
シベリウスを聴くならベルグルンドでということになる唯一無二、絶対の存在である。
先ずは作曲家シベリウスのことから紹介していこう。
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シベリウスという作曲家について
フィンランドが生んだ20世紀最高の作曲家の一人であるジャン・シベリウス。正にフィンランドが世界に誇る最高の芸術家である。
古今東西、どこの国においても、その国を代表する大作曲家というものがいるものである。ドイツやフランス、イタリア、ロシアといった大作曲家を何人も輩出している国はともかく、ある大作曲家と抜き差しならぬ特別な関係で強く結びついているという例が各国にある。
ショパンとポーランド、グリーグとノルウェー、チェコ(ボヘミア)とスメタナ、ドヴォルザーク、ハンガリーとバルトークなどなど。
その中でも、やっぱりフィンランドとシベリウスというのは特別に強い結びつきのように思われる。
多くはいわゆる国民楽派と呼ばれる19世紀の作曲家たちが多いが、シベリウスは完全に20世紀の作曲家だった。
1957年に何と91歳という天寿を全うして亡くなったシベリウスは、正に生きる伝説、いま流行りの言葉で言えば、レジェンドに他ならなかった。
しかもクラシック音楽の中でも最高の音楽様式と言われる交響曲(シンフォニー)を中心に作曲し続けた正にクラシック音楽の王道を行く作曲家であった。
そんなベートーヴェン、ブラームス、ブルックナー、マーラーなどの系譜に繋がる大作曲家がフィンランドという北欧と言えば聞いたところはいいが、ハッキリ言えばヨーロッパ辺境の地で活躍していたということが、益々伝説を神秘的なものとした。
名作は多いが、中心は7曲の交響曲
誰でも良く知っている最も人口に膾炙している作品は交響詩「フィンランディア」である。心踊る実にいい曲だ。他にもたくさんのオーケストラ曲がある。ピアノ曲や歌曲、合唱曲も多い。ヴァイオリン協奏曲は音楽史上屈指の名作として有名であるが、何と言ってもシベリウスと言えば7曲の交響曲だ。
交響曲と言えばベートーヴェンが破滅の9曲を作ったことで、その後の作曲家たちも何故か9曲を作った作曲家が続くという本当に不思議なジンクスがあった。
シューベルトもブルックナーもマーラーも、ドヴォルザークもみんな何故か9曲。実に不思議な話しである。
シベリウスは7曲だった。8曲目の交響曲の構想を長年に渡って練っていたが、結局、完成されることはなかった。
僕はいずれも甲乙付け難い素晴らしい作品だと思っているが、一般的には第2番が有名である。これは確かに名曲には違いなく、誰が聴いてもあの第4楽章の壮大なメロディを聴けば聴くほど心を揺さぶられ、大好きにならずにはいられない作品である。
だが、この第2番だけでシベリウスの交響曲が語られることはあってはならない。その後の素晴らしい作品をもっともっと知っていただきたいと切に願っている。
僕は第5番と第6番が特に好きだが、20分足らずの短い曲ながら、内容は非常に濃密な最後の第7番など、本当に素晴らしい作品が揃っている。
吉田秀和の評価は中々厳しいが
ところが、僕も傾倒する日本が誇る最高の音楽評論家である吉田秀和はシベリウスについてはかなり手厳しい。というよりも膨大な吉田秀和の音楽評論の中で、シベリウスに関する文章をほとんど読んだことがないというのが実情だ。
「LP300選」の中に、まとまったシベリウスの論評がある。それにはこう書かれている。
「多くの交響詩と7曲の交響曲、ヴァイオリン協奏曲で有名だし、彼よりも1年年長のR・シュトラウスの向こうをはって、長生きしたおかげで、特に欧米の批評家からは、現代音楽家に数えられているけれど、作風としては、民族主義的ロマン派の大家とみて、差支えあるまい。(中略)交響曲も、伝統的なものに多少目新しい変化もつけはしたが、実は、マーラーほどの革新も行っていないのである。ただ、二十世紀中葉まで生きていた人としては、珍しく、神経質な点も、分析的知性の異常な鋭さもない―マーラー、R・シュトラウスはおろか、ショスタコーヴィチやプロコフィエフよりもずっと目立たないという点で、珍重すべき人ではある。しかしそれも、元来が十九世紀に活躍すべき人であり、特に地理的状況からいっても、中欧・南欧の音楽家より、もっとおくれて成熟していったために、一般の音楽の歩みに対して少しずれていたと考えれば、そう大きな謎でもなくなる。ところで、そのシベリウスの何をとるか?一般には『二番』『五番』『七番』の交響曲か『ヴァイオリン協奏曲』というところが有名である。これ以上の選択は読者にお任せしよう。私が無理に選ぶとすれば、『交響曲第二番』ということになろうか」
と悲しくなってしまう程、いたって冷淡だ。まあ、さすがに本質を鋭く突いた解説ではあるのだが・・・。
晩年の30年間はほとんど作曲せず
シベリウスは91歳という大作曲家としては非常に珍しい長命を全うしたのたが、最後の交響曲を作曲したのは1924年。60歳の頃であった。その後は大規模な作品はほとんど作曲しておらず、30年以上に渡って沈黙し続けながらも、世界中の好楽家の尊敬を一身に集めていた。
この沈黙の30年間は、何とも残念なことだった。もっと作品を作り続けてもらいたかった。交響曲だって、あと2〜3曲は作曲できたのではないか。シベリウスの第九を是非とも耳にしたかったと果たせぬ夢を追い続けてしまう。
指揮者のパーヴォ・ベルグルンドのこと
パーヴォ・ベルグルンドはもちろんシベリウスと同じフィンランドの出身だ。ベルリン・フィルを始めとする世界中の名だたるオーケストラに客演し、名指揮者との名声を獲得したが、この指揮者はやはり自国が生んだ天才、すなわちシベリウスの作品を指揮するために生まれてきた指揮者と言っても過言ではない。
長い間、フィンランドを代表するオーケストラであるフィンランド放送管弦楽団やヘルシンキ・フィルハーモニーと組んできたのだが、その後はヨーロッパ室内管弦楽団とコンビを組んで、素晴らしい名演の数々を残すことになった。
ベルグルンドによるシベリウスの交響曲全集の録音は3種類あるのだが、特に最高の名演として評価が高い1995年~97年にかけて録音された3回目の全集でも、オーケストラはヨーロッパ室内管弦楽団が選ばれていた。
2012年に82歳の天寿を全うして亡くなっている。
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このブルーレイに収められた演奏について
このブルーレイに収められた演奏はベルグルンドによる第4回目のシベリウスの交響曲全集ということになる。従来までCDによる音でしか聴けなかったベルグルンドの演奏が、こうして交響曲の全曲を演奏会のライヴ映像で試聴することができることに狂喜してしまう。
ここでのオーケストラもヨーロッパ室内管弦楽団である。ということは、このライヴ映像は、我々が日頃から慣れ親しんでいるパーヴォ・ベルグルンドのシベリウスの交響曲全集の最高の演奏と評価されている録音の直後に行われた演奏会のライヴの記録なのである。
正確な情報を伝えておきたい。1998年8月に開催されたヘルシンキのフィンランディア・ホールで行われたヘルシンキ・フェスティバルでのライヴ映像である。収録日は以下のとおりである。
8月23日・・・第2番&第4番
8月24日・・・第1番&第5番
8月25日・・・第3番、第6番&第7番
時にパーヴォ・ベルグルンドはちょうど70歳になった頃であろうか。
こんなライヴ映像が残っていて、ある日突然ブルーレイで出現するなんて、全く想定していなかった。このブルーレイが販売されるとのニュースに接したときの興奮は言葉にできない。
ちなみに、このブルーレイが世界に発売され、僕が日本で入手したのは一昨日!のこと。僕の手元に配送されてきたのは、2022年2月18日のことだった。まだ2日前のことである!
本当に信じられない、ほとんど奇跡としか言いようがないものだ。
実は、残念ながら画質はあまり芳しいものではない。1998年の演奏会のライヴ映像。もう少し高画質で撮影できなかったのかと残念でならない。1枚のブルーレイに収めなくても、2枚組にして画質を向上させることができなかったのかと嘆きたくなる。それは画質と関係がないのだろうか?そういう技術的なことは良く分からないのだが。
だが、そうは言っても、ブルーレイならではの画質を期待するから不満も感じてしまうのだが、その画質そのものが特別劣っているわけでは決してない。ないものねだりはもう止めにしたい。
このような至宝とも言うべき貴重な映像が残っていて、それをブルーレイで試聴できることを心から喜びたい。
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輸入盤なのに解説書に日本語訳が載っているのが嬉しい
このブルーレイは輸入盤なのだが、そこに添付の解説書には日本語訳がしっかりと掲載されており、嬉しい限りである。
その中に、1981年から2002年という長きに渡って、ヨーロッパ室内管弦楽団の首席オーボエ奏者を務めたダグラス・ボイドによる貴重な「前書き」がある。これはこのブルーレイの演奏を理解する上で、これ以上ない貴重な情報なので、その一部を抜粋させていただく。
「私たちヨーロッパ室内管弦楽団(COE)の団員は幸運なことに、各時代における最も偉大な指揮者たちと音楽を奏でることができた。その多くは楽団員から大きな尊敬を集め、また楽団員個々の音楽的な成長に貢献した。しかし、COEの楽団員が例外なく敬愛した指揮者を一人上げるとしたら、それはパーヴォ・ベルグルンドだ。
(中略)
私たちはエジンバラ国際音楽祭でシベリウスの全交響曲を演奏し、CDを録音し、最後にヘルシンキに乗り込んで全曲演奏会を行った。このフィンランドでのコンサートはずっと、COEの楽団員の間で語り草の一つになっている。フィンランドの聴衆がパーヴォに見せたあたたかな反応、COEの気迫、命をかけているかのように演奏する感覚は、パーヴォと彼が生涯を捧げた果てしないシベリウス探求への敬意の現れだったのだ」
これ以上の解説は、一切不要だろう。
パーヴォ・ベルグルンドの指揮姿について
そのヨーロッパ室内管弦楽団の楽団員たちから大変な敬愛を受けたパーヴォ・ベルグルンドは、言っちゃ悪いが日本のどこの田舎にもいる頭のハゲた少し小太りの百姓風情のおじさんそのものだ(笑)。
ところがそれでいて、実にサマになる指揮をするのである。
今まで写真で風貌を見て、もっと枯れた淡々とした指揮をするイメージであったが、実際に指揮を目の当たりにすると、随分と違う。
思っていたよりもずっと情熱的な力強い指揮をするのである。
ベルグルンドは珍しく左手に指揮棒を持つのだが、指揮棒を持つ左手も右手も非常に雄弁である。力強い熱い指揮をする。かなりカッコいいのである。時には燃えたぎるような指揮姿まで見せる。
基本的には流麗な流れるような指揮。実に表情豊かな味わいの深い指揮でもある。
この映像を観るまでパーヴォ・ベルグルンドがこんなに魅力的な指揮をする人だとは全く想像がつかなかった。
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音楽ファンなら絶対に手元に置いてほしい家宝の一枚
このブルーレイは本当にちょっと考えられない夢のような奇跡的なディスクである。シベリウスの交響曲全集を聴くなら絶対にこの演奏!と評価が高いパーヴォ・ベルグルンドとヨーロッパ室内管弦楽団による最高評価のCD録音の直後に行われた本国ヘルシンキで行われた凱旋演奏会のライヴ映像。
あの抜群の評価を誇るCD録音の、直後に行われた演奏会映像。本当にとんでもないものが残っていたものだ。これは、クラシック界の近年最大の事件と言ってしまってもいい位のインパクトがある。実際の演奏の様子は正にそれをしっかりと裏付ける稀有の名演となった。
正しくこれは家宝になる貴重な一枚。クラシック音楽ファンならもちろんのこと、全ての音楽ファンは手元に置いていただき、繰り返し試聴してほしい夢のような一枚である。
本当に迷わず購入してほしいと声を大にしてお願いしたい。きっとかけがえのない素晴らしい音楽体験になるはずだ。
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