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合唱の再開はまだまだ厳しいが・・・。

僕が指揮者を務めている合唱団では、6月に入った今も練習は全面的にストップしたままだ。これはわが団だけではなく、全国の全ての合唱団で練習を見合わせているものと思われる。この練習中止はいつまで続くのであろうか?

緊急事態宣言は全国で解除されたが、合唱の再開は別問題

合唱は3密の典型であり、緊急事態宣言が解除されても直ぐに活動が再開できるわけではない、ということは残念ながら当然のことだ。東京都の3段階の自粛要請緩和ステップ(ロードマップ)の中でも、明確ではないがライブハウスなどと並んで、一番最後になりそう。いや更に遅れることになるのではないかと思われる。

わが合唱団は2月の後半から練習を完全にストップさせているので、既に5カ月間全く歌っていないどころか、メンバーが顔を合わせることすら一度もない。
いくら絆の強い合唱団といっても、さすがに関係が希薄になりそうで、合唱のスキルの低下もさることながら、これでは合唱団がもたないと痛感させられる毎日だ。

合唱の練習を再開できないだろうか?いつから歌えるようになるのだろう?

どこの合唱団でも、対応を巡って悩んでいる筈なので、僕なりに検討してみる。試論というか、提案である。

可能であれば、7月から再開したい。だが、ハードルは極めて高い。問題は「3密」だ。

改めて「3密」の内容を確認してみる

3密は一般に以下のように定義付けられている。

  1. 換気の悪い 密閉空間
  2. 多数が集まる 密集場所
  3. 間近で会話や発声をする 密接場面

密閉・密集・密接だ。

合唱の練習再開は、3密をどうやって解消するのかという問題に帰着

どうやったら、三密ではない環境を作り上げるのか?
元々合唱という活動では、この「3密」を回避することは極めて困難なのだが、敢えて何とかならないかを考えてみたい。

3つの「密」を一つずつ、どこまで潰せるかの検討となる。

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1.【密閉】をどう回避するか?

① 先ずはできるだけ広い練習会場確保

② こまめな(頻繁な)換気の実施。

元々、「密閉」は換気が悪いことを指摘されているのだから、頻繁な換気は絶対に必要だ。
したがって地下の練習会場とか、窓のない部屋は使えない。使ってはいけないということになる。

問題は、ちゃんと外気を入れられる窓のある練習会場での換気をどうするかという検討だ。

大前提として、合唱の練習の際には、つまり歌っているときには、外に音が漏れないように絶対に窓を閉めるのが、この世界のルールなのだから困る。

とにかくこまめに換気を行うということに尽きると思う。
「一曲歌う毎に休憩を取って、頻繁に窓を開ける」これくらいの覚悟が必要だ。

具体的に細かく検討してみよう。
僕のイメージでは、こうなる。いかがだろうか?

10分又は15分歌ったら、5分の換気。これを繰り返す。
そして長い休憩時間をできるだけ取り入れるようにする。

例えば、僕らの合唱団のように毎回4時間の練習時間の中では、今まで途中に10分休憩を2回、場合によっては3回挟んでいた。
休憩時間を除く実質練習時間は、3時間30分〜40分。

それを今後は、30分毎に10分休憩を入れる。実質的に3時間の練習時間。

それだけでは不足。その30分の練習時間の中にも10分又は15分毎に5分の換気休憩が必要になるのではないか。つまり30分の練習時間の中にも一回5分間の換気休憩を取る。

10分歌って5分換気。15分歌って10分休憩。この30分インターバルを繰り返す

これを4時間の練習枠で考えると休憩時間が全体で90分となり、正味練習時間は2時間半となる。ほとんど休んでいるというわけだ。

だが、それでも全く合唱の練習ができなかった昨日までを思い起こせば大きな前進であり、天国であることは間違いない。

一回あたり2時間練習する合唱団であれば、45分間が休憩となり、実質的には1時間15分の練習時間となる。

練習時間のおよそ半分近くは、休憩と換気をやっていることになってしまうが、今まで全く集まることさえ叶わなかったことを思い起こせば、歌えるだけでも幸せだと思わなければ。

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2.【密集】をどう回避するか?

合唱団の全メンバーを一堂に集めて練習することは不可能だと諦めてもらうしかない。
合唱団のメンバーの人数、規模にもよるが、相当に大きな会場を確保できない限り、全員で歌うことは困難だと判断せざるを得ない。これは相当に辛いことかもしれない。

だが、最近の合唱団は構成メンバーがドンドン少なくなる傾向が強いので、コロナ感染防止には小規模合唱団というのは都合がいい。

さて、その一堂に集まれる人数の限度数だが、これは会場との相関関係があるので一概には言えない。

一つの目安になるのは、飲み会での人数自粛勧告だ。確か団体、チームは9人まで。つまり10名以下が求められているはずで、それが一つの参考になりそうだ。

だが、10 名以下の制限はかなり厳しい。指揮者の立場からの強い要望として、ここは15 人までは許容して欲しいと思う。

仮に15人までは許されるとして、それを超える合唱団はどうすべきか?

15名の以下の合唱団であれば、全員が一堂に集まることも、上述の「3密」を回避する方法を厳守すれば許されると考えるが、問題は「3密」の回避を徹底的に行ったとしても、合唱団の人数が15名を超える団体では、また別の対策が不可欠になってくる。
要するにメンバー全員が一斉に集まって練習することは避けるべきだということだ。そこで、以下のような対策を提案したい。

① パート練習

指揮者とピアニストは毎回参加することにして、とにかくパート練習を展開。アンサンブル練習はしばらく見合わせる。

② 合唱団の細分化(グループ化)⇒ 小アンサンブル練習

細分化と聞くとドキッとするが、各パートを2〜3のグループに分けてABCに区分。それぞれのパートの先ずはAグループだけ集まって小アンサンブルで練習する。次回はBグループ。その次はCグループといった具合。

その際、各パートリーダーは毎回出席してもらう。
したがって、逆に言えば、毎回の練習ではそれぞれのパートにはパートリーダーと数人の違うメンバーで構成される小アンサンブルになるという方式である。

パートリーダーが自分のパートのメンバーがどれだけ歌えているかを正確に把握するためにも、これは悪くない方法だと考えるが、どうだろう?

30人までの合唱団なら、2回に一回は、つまり隔回毎には歌えることになる。50人近くいる大合唱団でも3回に一回は参加してアンサンブルを楽しむことができる方法だ。

いずれはABCの各グループをパート毎にバラして、ソプラノはA、アルトはB、テノールはCなどで集まり、小アンサンブルを展開してもいいだろう。

この方式はかなり現実味がありそうだ。

③ パート練習と小アンサンブル練習との組み合わせ

それぞれの合唱団の実情と必要性に応じて、色々とやってみればいい。

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3.【密接】をどう回避するか

これがある意味で一番頭が痛い課題かもしれない。

合唱の本質に関わる部分だからだ。前にも書いたが、合唱で一番大切なことは歌うことではなく聴くことなのである。

美しくハモらせて、心を一つにして歌うためには、周りのメンバーの音と声を聴かなければならない、これが合唱の最も大切な部分と言われるようになって久しい。

良く聴く、それは全員に求められる鉄則だから、結局はお互いに「聴き合う」ということに集約される。

聴き合うためには物理的に近づくことが求められることは当然だ。
つまり、合唱という活動は、合唱そのものの本質として何よりも密接が求められる活動なのだ。

言い換えれば、新型コロナの感染防止で非常に強く求められるソーシャル・ディスタンスが、合唱はその本質上無理な活動ということになる。

<マスクをしてソーシャル・ディスタンス、人との距離を取れ>と言われるが、合唱ではどちらも致命的。この二つの要請を守ることは至難の技ということになる。
合唱は大きな声で歌うわけだから、飛沫合戦・飛沫大会となり、お互いに聴き合うためにソーシャル・ディスタンスは取りにくいと。

誠に困った活動なのである。これが合唱の再開を阻む大きな障害となる。

ちなみに飛沫が一体どこまで飛び散るものなのかは、知っておいた方がいい。
合唱で大きな声で歌を歌うときにどれだけ飛沫が飛ぶのか調査した報告は今のところないようだが、日常生活の中での飛沫の飛び方は優れた資料があるので、参考にしてほしい。
飛沫はどこまで飛ぶ?感染防ぐ専門家の意見は」。新潟大学の斉藤玲子教授の見解を取材したものだが、この中のべからず行動集では、飛沫を飛ばさない!という項目があり、その筆頭が「歌う」である。つまり、そもそも歌うな!飛沫を飛ばすからということで、合唱にとっては極めて厳しい指摘だ。

本当に困ってしまうが、何とか対策はないだろうか?

プロの合唱団やプロ並みのレベルの高い合唱団では、一人ずつの力量が高いので、ソーシャル・ディスタンスを保ちながらも、つまり一人ひとりの距離がかなり離れていても、互いに聴き合えるかもしれないが、アマチュアではかなり難しい。

でも、このコロナ禍の中で合唱を再開するためには、これをどうしても乗り越えなければならない。

ソーシャル・ディスタンスを保ちながらも、お互いの声を聴き合えるようにしたい

僕は意外とできるかもしれないと少しだけ希望を抱いている。
隣のメンバーとの距離を取っても、聴こうとする意識があって、耳を集中させれば、できないことはないような気がしている。

実際、本番のステージでは、会場によっては隣りとの間がかなり離れているようなこともある。例えば東京都の合唱祭なんかではそうだった。

これを契機に距離を取って離れて歌い、その中で耳を鍛え、意識を高め、聴き合えるように努力しよう!

新型コロナ感染拡大防止を、「災い転じて福となす」にしたいものだ。

そんな練習を重ねることによって、もしかしたらそれぞれの合唱団は以前よりももっと上手くなるなんていう、嬉しいこともあるかもしれない。

目指すべきはこれだ。
本当に災い転じて福となすにしたいものだ。

以上の検討で、工夫次第で何とか「3密」を回避することができるということが分かってきた。
それ以外にも、色々と細かい部分で、配慮しなければならないことは目白押しだ。

【基本的な感染防止策の徹底】

以上、「3密」を回避する方策を具体的に検討してきたが、以下に掲げた基本的な感染拡大防止策を講じることは合唱団として当然なことである。メンバー一人ひとりの自覚も当然だが、合唱団としてのフォローは不可欠だ。

① 練習に参加するメンバーの体温測定

各自が体温計を持参し、練習開始前に検温。37度以上のメンバーは帰宅させる。

② 入室前に手指消毒の徹底

これはハンディタイプを各自が用意し、持参するのが望ましいが、合唱団として用意することが不可欠と考える。

③練習開始時に除菌ウェットティッシュで各自が腰掛ける椅子の消毒、終了後の消毒の徹底

除菌ウェットティッシュも責任を持って、各自で持参

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【マスクをどうするのか】

新型コロナの感染が拡大し、それぞれの合唱団が練習を自粛すべきかどうかを問われた3月頃、実は僕らの合唱団はブログにも書いたように2月の中旬以降、全ての練習を中止していたのだが、それはかなり早い対応をした方で、周りの巷の合唱団はまだまだ練習を続けているケースが多かった。

当時まだ練習を続けていた合唱団の関係者から話しを聞いたところ、何とマスクをしながら歌っているとのことであった。

マスクをしながら歌うということが、僕には想像ができなかったが・・・。

音色は一体どうなるんだろう?ちゃんと求められる声は出るのだろうか?

信頼している若手合唱指揮者が、「そんなにひどくはない。結構練習にはなる云々」と聞いてビックリしたことがある。彼女が言うのだから、まんざら無理を言ったとは思えないが、僕はかなり否定的なのだ。

でも、これはやったことがないから正直言って分からない。

今は四六時中マスクをして人とも話をしているわけで、報道番組のキャスターやアナウンサーはともかく、国会中継でマスクをして答弁をしている姿をテレビでよく見かけるが、普通に聞き取れるし、小池都知事等の会見もいつもマスク越しに聞いているが、そんなに聞きづらくはない。
ということは、これで歌も支障なく歌えるのだろうか?

指揮者として、マスクを通して聴こえてきた声と音で満足できるのかどうか、本当にこればっかりは分からない。いずれ練習を再開した際に、試してみればいいのだが、一つ心配なのは、この季節のことだ。

最近では30度を超えることも珍しくなくなって、ニュースでもマスクと熱中症のことが連日報道されている。この暑い中でマスクをして歌うことは、熱中症の危険も頗る高く心配だ。

マスクをして歌えば、少なくても大幅な飛沫の飛び散りは回避されて、飛沫大会、飛沫合戦ば避けることはできそうだ。だが、音が心配なのと熱中症が心配だ。

でも、待てよ。ここで冷静に考えなければならない。

こんな議論をしたところで、そもそもマスクを付けないで歌うなんてことは、到底許されないことに違いない。巷では普通に生活をしていてもマスクの着用が求められている。

飛沫を飛ばす可能性が濃厚な歌うという行為でマスクを外すことは、どんなに距離を保ち、ソーシャル・ディスタンスを守ったも許されない!

そう考えるべきだ。

合唱の練習を再開するにあたっては、とにかくマスクを付けて歌うことは最低限の絶対条件となる。いいの悪いの言ってられない。ここには議論の余地などないのだ。

だとすれば、某若手合唱指揮者がおっしゃる、結構いける、あまり問題ないという感想は大変に貴重なものだ。だが、暑さ対策だけはを真剣に考える必要がある。

先日、仕事で、マスクを付けて営業活動をした際、暑くてたまらないどころか、マスクの中が汗でビショビショになるという辛い経験をした。4時間も歌い続ければ、その間にどれだけの休憩を設けようとも、その苦痛たるや、容易に想像できる。エアコンをフル稼働して相当に室温を下げないと倒れるメンバーも続出しそうだ。

いよいよ合唱の練習再開という解禁日が少しずつ近づいて来る中で、確かに、中々ハードルは高いが、以上の検討からは、ハードルは高いながらもかなり希望はある、やれるような気がしてきた。どうだろうか?

一日も早く検証してみたいものだ。7月から少しずつスタートさせられないだろうか?

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【リモート・オンライン練習について】

リモートでの練習は僕は一切否定したい。
あれで音楽を作れると思っているなら、アンサンブルのことを分かっていない人間だ。
僕の場合はあんなことをやると、却って辛くなってしまう。

どうしても集まることが許されない緊急事態宣言下ならともかく、これからのことを考えたら、リモートやオンラインでの練習というのは、僕は否定せざるを得ない。

緊急事態宣言下の絶対に練習などできないし、外出することさえままならなかったときには、リモート練習・オンライン練習はみんなの絆を強めるためにも、有意義ではあったと思う。その必要性と効果は評価できる。
だが、あれから少しは前進できた。ステージが明らかに変わったのだ。

今は、人と人とが実際に集まった上で何とか練習をすることができないか?どう展開するか、どうしたら感染のリスクを抑えることができるかという観点から挑戦を試みるときだ。

来月7月から再開できれば嬉しいが・・・。

いきなり全員で集まることはやはり断念せざるを得ないと思う。

先ずは前述の小アンサンブル練習からできないだろうかと考えているところだ。
僕らの合唱団はメンバーが30人弱なので、AB二つのグループに分けて、交互に練習を再開できればありがたい。

ちなみにその辺りのことを、20日(土)に運営系・技術系の全幹部が集まって、意見交換、打合せをする予定になっている。

どのような形(練習形態)になっても7月から何らかの合唱活動を再開させたいと狙っているのだが。東京都の感染者の状況等によっては、難しいかもしれない。

現実的には7月からの合唱再開は、まだまだ困難かもしれない。確かにそんな気もするのだが、何とか突破口を開けないか、その一心でまとめてみた。

小中学校の音楽の授業の中で歌・合唱をどう進めていくのかも参考に

しばらくは歌は自粛して楽器を優先させるのか、そのあたりの動向も、非常に重要な情報だと思う。

新型コロナ感染拡大を回避できる練習方法を見出したい。それを先ずは僕の合唱団で一日も早く検証してみたい。それが偽らざる本音である。

この記事が、世の中にあまたある悩める合唱団への情報提供と問題解決の一助となれば嬉しい。

僕の合唱団の実際の再開予定等については、またその都度、報告をしていくつもりだ。
参考になればありがたい。

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