目 次
昨年公開映画のベストテン発表（共通）
今月に入って、昨年公開されたばかりの話題作を、Amazonプライムで立て続けに観た。
キネマ旬報ベストテンが２月早々に発表（2.5「キネマ旬報ベストテン」発売）され、昨年公開された内外の映画の評価が出た段階で、僕は例年、観た映画、まだ観ていない映画を整理する。
ちなみに外国映画のベストワンは、読者選出ベストテンを含めて、既に紹介させてもらったノーラン監督の「オッペンハイマー」が２冠に輝いたことは、冒頭で触れておきたい。クリストファー・ノーランが外国映画監督賞と読者選出外国映画監督賞も受賞したので４冠達成という快挙を上げている。
ビルの工事に伴ってギンレイホールが閉館してしまい、再開の目途がつかない今、映画館に通うことは皆無となり、ここ数年、劇場で新作映画を観ることがなくなってしまった。
したがって、発表されたキネマ旬報ベストテンは、最近ではほとんど全ての映画が、観ていない作品ばかりになっている。
その中で、特に興味を引く映画を、ブルーレイが出ているものであれば、それを購入して鑑賞する、それが最近の僕の映画の見方である。
ところが本当に驚いたことに、公開されてまだ日が浅く、したがってまだブルーレイなどのソフトも販売されていないにも拘わらず、直ぐに、しかも無料で観ることができる作品が何本もあったのだ。
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Amazonプライムで傑作が見放題（共通）
Amazonプライムである。
昔の作品ならいざ知らず、昨年公開されたばかりの話題作や傑作で、まだソフトの販売も行われていない最新の映画が、無料で見放題なのである。
正直、ぶったまげた。どういう仕組みになっているのか、どうしてこんなことが可能なのか、にわかに理解できない。
そういわれれば、２年前に例の「ゴジラー１．０」がいち早くAmazonプライムで配信されて、無料で見放題になったことは記憶に新しい。
そんなことが色々な作品で起きているのだった。嬉しい悲鳴が止まらなくなる。
信じられない思いで、しかしこの恩恵に心から感謝しつつ、今月は最新の話題作、傑作を無料で楽しませてもらった。
取り急ぎ、４本を観た。いずれもキネマ旬報ベストテンに選ばれている評価の高い作品ばかりだ。
「碁盤斬り」、「あんのこと」、「Cloud クラウド」、そしてアメリカ映画の「シビル・ウォー アメリカ最後の日」の４本だ。
４本目は、アメリカ映画の大ヒット作「シビル・ウォー アメリカ最後の日」である。これが凄かった。
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話題の「シビル・ウォー」を配信で観た
これは昨年（2024年）の秋から冬にかけて、ということはつい先日のことだが、アメリカ本国で大ヒットし、日本でもかなりのヒットを記録した超話題作だ。
アメリカの内戦を描いた映画で、折りしもトランプの大統領の返り咲きも決定した後だっただけに、現在のアメリカの甚だしい分断を象徴するかのようで、多くの観客を集めたことは先ず間違いないだろう。
その意味では、極めてタイムリーな映画と呼ぶべきで、この想定外の内外での大ヒットは偏に現在のアメリカの政治状況への当てつけのようにも思える。
だが、僕はこの映画の出来そのものを、非常に高く評価するものだ。
たまたまタイムリーに時流に乗ったという作品ではなく、かなり奥の深い作品だと思われる。
公開間もない話題作が無料で観れる驚き
まだ公開されたばかりの話題の大ヒット映画が、Amazonプライムという超メジャーな配信サービスで、早くも無料で見放題になることが、未だに信じられないでいる。
こんな恩恵に預かっていんだろうか？というのが往年の映画ファンの偽らざる感想である。
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想定の内容と違ったが、衝撃は深い
この映画のテーマは、タイトル通りズバリ「シビル・ウォー」、すなわち「内戦」だ。
あのかなりインパクトの強い煽情的なポスターやチラシなどを見れば、この映画はアメリカの内戦、かつての南北戦争のようなアメリカ人同士による過酷な激戦を描く戦闘シーンに満ち溢れたド派手な戦争映画を想像した人が多かったのではなかろうか。
僕だってそう思っていた。
アメリカ史上唯一の内戦だった南北戦争の再来として、「共和党ｖｓ民主党」、いや「トランプｖｓ反トランプ」という設定でアメリカ国内で内戦が勃発し、それをド派手なアクションで描いていく。
そんな戦争シーン、あるいは戦闘シーンの激しさが勝負のアクション映画を期待していたのではないだろうか？
ところが、全く違う。そう思っていた人は、期待を完全に裏切られることになる。
この映画は極端に言えば、舞台がアメリカである必要さえなかった、そう言ってもいい。
これは、内戦の戦闘アクションを描くのではなく、
①自国民同士が内戦に陥ったらどんな事態（特に精神面で）になるのか
②戦場における報道カメラマン、ジャーナリストの在り方はどうあるべきなのか
それを突き詰めた映画なのである。
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報道カメラマンによるロードムービー
この映画は「ロードムービー」。主人公たちの移動、すなわち旅を通じて描かれる旅先の状況と登場人物たちが旅を通じてどう変容し、成長していくのか、そんな類の映画である。
その旅が戦場巡りというわけだ。内戦に陥ったアメリカ国内の戦場を巡る旅で、描かれるのはアメリカ人同士が憎しみ合いながら相手を殺戮していく内戦の凄まじい実態である。
それが分かった段階で、「えッ！？そうなの？アメリカの内戦の顛末を描く映画じゃないのか」と、一旦は落胆の思いに駆られることだろう。
僕もそうだった。「この映画、どうも様子がおかしいな。これは一体何なんだ？」という違和感にずっと付きまとわれていた。
だが、真相が分かった後は一気に引き込まれ、最後まで夢中になってハラハラドキドキしながら、目の前の映像を凝視し続けた。
非常に重い、衝撃的な映画。これは大変な映画だった、と観終わった後もいつまでも尾を引いている。
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映画の基本情報：「シビル・ウォー 」
アメリカ映画 109分（1時間49分）
2024年4月12日 アメリカ公開
2024年10月4日 日本公開
監督・脚本：アレックス・ガーランド
出演：キルスティン・ダンスト、ヴァグネル・モウラ、スティーヴン・ヘンダーソン、ケイリー・スピーニー 他
キネマ旬報ベストテン 第98回（2024年） 外国映画ベストテン第7位 読者選出外国映画ベストテン第4位
※非常に高い評価を獲得している。
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どんなストーリーなのか
ジャーナリストが内戦に陥ったアメリカの各所の戦場を巡りながら、大統領に取材しに行く姿を描く映画とは既に書いたとおりだ。。
異例の３期目に入ったアメリカ大統領が、全面的な勝利が近いと緊張した面持ちで宣言している場面から映画は始まる。
アメリカでは19州が政府に対して反旗を翻し合衆国から離脱し、テキサス州とカルフォルニア州が「西部勢力」を結成し、政府に宣戦布告したことで、国内各所で激しい内戦状況に陥った。
著名な報道カメラマンであるリーとベテラン記者は、14カ月以上に渡ってマスコミの取材を受けていない大統領にインタビューするために、ニューヨークから首都ワシントンD.C.のホワイトハウスを目指す。そのためには何カ所もの戦場をかいくぐって行かざるを得ない。
リーの師匠に当たる高齢のベテラン記者に加え、たまたま戦闘の場で知り合った若い新進カメラマンも同行することになる。
数々の悲惨な戦場を巡り、自分たちも命の危険に身をさらしながら、遂に大統領がいるホワイトハウスに到着。そこで一行が目撃した衝撃的な結末は・・・。
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衝撃映像が続々と映し出される
ジャーナリストがカメラ片手に各地の戦場を巡りながら大統領への取材を目指す旅だけに、徹底的に報道視線、カメラマン目線で描かれる。
そこで目にする凄まじい戦争の実態、彼らが写真に刻んだ戦闘シーンや撃たれて血を流しながら死んでいく兵士の描写は容赦ない。
悲惨な衝撃映像が次々に写し出される。
自国民同士が殺し合う姿を写真として残す役割を担う報道カメラマンの目を通して、悲惨な戦争の実態を浮き彫りにさせていく。
一行はかなり衝撃的な危険な場面にも遭遇し、危うく九死に一生を得るのだが、観ているこちらもメンタルをやられかねい凄まじさだ。
終盤はド派手な戦闘シーンが目白押し
派手な戦争映画とは全く異なるのだが、終盤はかなり激しい濃厚な戦闘シーンの連続となる。
そのあたりを期待していた人も、この終盤を観れば満たされるのではなかろうか。
首都ワシントンD.C.のホワイトハウスでの攻防だ。これはかなり激しく、強烈に描かれる。ちょっとやり過ぎではないかと思える程だ。
そこでは有り得ないシーンが待ち構えている。ネタバレで書けない。観てのお楽しみ。
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ダンストが凄い女優になってビックリ
ベテラン報道カメラマンのリーを演じるのは、あのキルスティン・ダンストである。「スパイダーマン」シリーズですっかり有名になり、マリー・アントワネットなども演じた実力派女優だ。
決して美人でもないのに、若い頃から途切れることなく話題作に出てるなと感心していたが、今回の戦場カメラマン役に接して、非常に感銘を受けた。貫禄十分の凄い女優になっていて、正直驚いた。
リーは、著名なベテラン報道カメラマン役なのだが、強引に付いてきた新進の若い女のカメラマンを一度は拒みながらも、少しずつ心を通わせ指導していく。
今回の悲惨な内戦に、彼女は心底心を痛めていた。苦悩のカメラマンといった役割を担っている。そんな難しい役回りを見事に演じた。
僕は非常に好感を持ち、ダンストを大いに見直した。
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新人役のケイニー・スピーシーに釘付け
一方の若手カメラマン。この子が芯の強い役柄ながらも何ともかわいらしく、魅力的だった。非常に小柄な女優なのだが、存在感が半端ない。
何かの映画で見たこともある気もした。誰だろうと調べたら、ケイニー・スピーシーだった。
えッ！？ケイニー・スピ―シー？まじか、といった具合。
ケイニー・スピ―シーは、これから先の活躍が大いに期待されている注目の新進女優。あの話題の大ヒット作品「エイリアン・ロムルス」のヒロインを演じて、人気を決定的なものとした。
どこかで見たというのは、「エイリアン・ロムルス」だったのだ。「シビル・ウォー」にも出ているとは全く知らなかった。
身長155センチの小柄な女優で、本作の中でも23歳という設定ながらも中学生のように見える。
強引に戦場での写真を撮りたがっていたのに、いざ危険な目に遭うと、ガタガタと震えて何もできないばかりか、恐怖に怯えてゲロを吐く始末。
そんな彼女が経験を重ねながらドンドン逞しく成長していく姿が、この映画の見どころの一つで、思わず釘付けになってしまう。
ケイリー・スピ―シーはそのあたりを実に見事に演じ切って、あっぱれだった。
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今のアメリカの分断を投影した大胆な映画
実に大胆な映画だ。アメリカで激しい内戦が起きて、国民同士が互いに残酷に殺し合う。そして問題は解決しないどころか、最後は・・・。
こんな映画が良く作られたものだと感心する。こういうところはアメリカという国の懐の大きさを感じさせずにはおかない。
表現の自由と言ってしまえばそのとおりなのだが、こんなに赤裸々に何の忖度もなしに、内戦の実情を容赦なく描くばかりか、映画も大ヒットした。
凄いことだなって思わずにいられない。
トランプがよく嚙みつかなかった！
あの大統領に返り咲きを果たした直後のトランプが、よくぞこの映画に噛みつかなったものだと、感心してしまう。
もしかしたらトランプはこの映画を観ていないのではないだろうか？
賛否両論あるが、僕は断然評価
この映画を巡っては、一部にかなり厳しい批判もあって賛否両論に分かれている。
発表されたばかりのキネマ旬報ベストテンを見ると、評論家、読者共にベストテン圏内に入っており、非常に高く評価されていることが一目瞭然だ。
批判の多くは、「内戦に陥った経緯が全く分からない」「何を巡って対立が起きて、あそこまで激しい憎悪が芽生えてアメリカ人同士が激しく殺戮し合わなければならなくなったのか」などの経緯について一切の言及がないことを問題視する。
そんな批判は分からなくはないが、監督・脚本のアレックス・ガーランドは、敢えてそれらについては一切封印し、内戦勃発後の混乱と殺戮の実態だけに焦点を絞って、一気に見せた。
故意に経緯の説明を省いたのは明らかだ。
観客の不満や批判を承知の上で、敢えてそれらについて触れなかったことが、却って内戦の悲劇と悲惨さを浮き彫りにする。
理由や事情はどうであれ、一旦内戦が勃発すればこういう事態が待ち構えている、内戦はここまで互いの憎しみを増長し合う過酷なものだ、という懸念を描きたかったのだと思う。
その狙いは見事に成功した、と僕は考える。
この手法と描き方は正解だった、と僕は信じて疑わない。
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内戦が起きればこの悲劇が起きてしまう！
それぞれに正義はある。どんな戦争であれ、大義名分はそれぞれが持っており、それらがぶつかり合って戦争となる。
特に内戦では昨日までの隣人が、場合によっては家族が、敵味方に分かれて殺し合うような悲惨な戦いになってしまう。内戦が終わった後も、いつまでも禍根が尾を引くのも歴史が証明している。
だから、とにかく内戦は絶対にダメ、戦争を引き起こしてはいけない。それを訴えたかったのだと思う。
必見の問題作である。どうか今すぐにAmazonプライムで観てほしい。
☟ 興味を持たれた方は、どうかこちらからご購入ください。
4,290円（税込）。送料無料。ブルーレイ。発売は６月４日とまだまだかなり先だ。どうかAmazonプライムで、遠慮なく無料で観てほしい。
シビル・ウォー アメリカ最後の日 通常版【Blu-ray】 [ キルステン・ダンスト ]
