【第3楽章】からの続き

幻の3枚組LPボックスを発見した奇跡

最後はこのエピソードで終わりにしたい。

以前にもこのブログで書いたことがあったが、最近になって思わぬ感動的なエピソードがあったので、それをあらためて紹介させていただく。

これを「奇跡」と呼ぶことは、読者の皆さんからすれば、「何を大袈裟なことを!」と思われてしまうだろうが、僕にとっては奇跡以外の何物でもなく、本当に腰を抜かさん位に驚かされた感動的なできごとだった。

スポンサーリンク

3枚組LPボックスのかけがえのない価値

僕が間宮芳生の「合唱のためのコンポジション」に初めて出会うというあの衝撃的な体験をもたらした高校の音楽室に置いてあった3枚組のLPボックスを、行きつけの中古レコード(CD)店で発見したのである。

これは本当にあり得ないことだった。

夢にまで見たずっと探し続けていた合唱のためのコンポジションの3枚組のLPボックスの写真
夢にまで見たずっと探し続けていた「合唱のためのコンポジション」の3枚組のLPボックスの写真。これを発見した時の感動と衝撃。
3枚組のLPボックスに収められた中身。色とりどりのジャケットに収められた3枚のLPと分厚な解説書。
3枚組のLPボックスに収められた中身。色とりどりのジャケットに収められた3枚のLPと分厚な解説書。指揮は全曲、あの岩城宏之が受け持っていることも驚嘆に値する。

 

あの3枚組のコンポジションのLPボックスは、僕の垂涎の代物で、どうしても入手したかったのだが、どれだけ手を尽くしても買うことができない幻の宝物だった。

僕が狂ったようにクラシックのLPレコードとCDを買い漁っていることが、大切なポイントである。今、我が家にクラシックのCDが何枚あるのかは全く分からない状況となっている。

数えることを断念したからだ。若い頃は丁寧に手書きのリストを作っていたが、キリがなくなっていつの間にかやめてしまった。

3万枚を軽く下らないことは間違いないだろうが、本当に分からない

CDのコレクションは、モンテヴェルディやバッハやドビュッシーなど、作曲家別に集めるのが基本であり、三善晃と間宮芳生のCDは全て集めている

ほしいCDやかつてのお気に入りのLPは全て収集できた中にあって、どうしても欲しくてたまらないのに、どうやっても入手できなかった幻のレコードが、例の間宮芳生の「合唱のためのコンポジション」のビクターから出ていた3枚組のLPボックスだったのだ。

高校時代に音楽室に置いてあって、僕の間宮芳生体験の原点となったあの立派な箱入りのLP3枚組だ。

スポンサーリンク

6曲の全てが超ド級の最高の演奏

音源として先ずは非常に素晴らしい演奏が揃っていたこと、この3枚のLPレコードの価値を不動のものとしていることは言うまでもない。

6曲全ての演奏がこれ以上考えられない程の見事な演奏ばかりで、圧巻の一言に尽きる

指揮を受け持ったのは6曲の全てが、日本を代表する著名指揮者の岩城宏之であったことにも驚嘆させられる。

第1番と最高傑作の第5番「鳥獣戯画」はその後もいろいろな演奏が誕生したが、やはりこのLPレコードの演奏を凌駕するものは出ていない。岩城宏之がいかに傑出した指揮者だったのか、痛感させられる。

僕が熱愛していた第6番(男声合唱)も、本当に鳥肌が治まらなくなる程の名演だった。

作曲された直後に行われた録音が、こんなに素晴らしいということは信じがたいこと。演奏する側のこの曲を大切にする思い、この曲にかける思いがただ事ではなかったことが窺い知れる。

スポンサーリンク

 

第2番はこのLPボックスでしか聴けない

そして何と言っても強調しておきたいのは、第2番の演奏が、未だにこの録音しかないということだ。

第2番は混声合唱のためのコンポジションだが、フルートと打楽器群(4台)が必要となるために、うかつに手が出せないということがあったのだろうか。音楽は魂を抜かれる程に美しさと哀感に満ちたもので、僕は大好きな作品だ。

ところが、何故か演奏される機会はほとんどなく、レコーディングされることも全くなく、現在に至っている。本当に理解できないというか、残念でならない。

このLPボックスがCDに復刻されなかったことで、今日、我々はこの素晴らしい作品と傑出した演奏を聴くことができない。18分程のそれほど長くはない曲だ。この2番だけでもCD化してもらえないだろうかと切に願っている。

本当に素晴らしく感動的な音楽と演奏なのである。

スポンサーリンク

添付の解説書が極めて貴重な資料

演奏の素晴らしさに加えて、もう一つの特筆事項は、レコードに添付されていた分厚な解説書の存在だった。この貴重な解説書が垂涎の的だったのである。

僕が高2の時に初めて間宮芳生の「合唱のためのコンポジション」を聴いたときにも、この部厚な解説書に驚嘆すると共に、大切に読ませてもらったことを良く覚えている。

当時はまだ簡単にコピーを取れる時代ではなかったし、しかもLPレコードと同じ大きさでコピーを取ることはほぼ不可能だった。

ということで、僕はあの貴重な解説書のコピーも持っていなかった

約100ページ近い解説書で、ボリューム的にも内容的にも、解説書というよりも濃厚な分析書、研究書と呼んだ方がいい程の充実したものだった。

特に僕がすごいなと思ったのは、間宮芳生によってデフォルメされた日本の音素材のオリジナルを具体的かつ克明に紹介してあったことだ。

添付の解説書からの1ページ。
添付の解説書からの1ページ。間宮芳生と小泉文夫が詳しい解説を書いている。貴重な資料である。

 

曲中に出てくる民謡や囃子言葉、わらべ歌のオリジナルがどこのものなのか、全部分析されていたのだった。これには驚嘆させられた。大変な労作だった。

間宮芳生自身が全面的に協力したであろうことは間違いない。間宮芳生自身による解説も非常に充実したものだった。

添付の解説書からの1ページ。
添付の解説書からの1ページ。ここでも作曲者の間宮芳生との小泉文夫のダブル解説。何ともぜいたくなもの。

 

解説書の全体の監修はあの民族音楽の世界的な権威、研究者として広く知られていた小泉文夫で、小泉自身も執筆していた。

添付の解説書からの1ページ。
添付の解説書からの1ページ。ここでは第1番の初演で指揮をした岩城宏之の解説。初演というだけではなく、この3枚のLP全ての指揮を担当している。この岩城宏之の解説がまた読み応え十分だ。

 

その後、僕が実際にコンポジションを演奏するに当たって、あの解説書の情報が欲しくてたまらなかったのだが、その願いを満たすことは遂にできなかったのである。

スポンサーリンク

入手は完全に諦めてしまった

あの3枚組のLPボックスをそっくりそのままCDボックスに復刻してもらうことまで、ビクターに直接働きかけた僕の思いをご理解してもらえるだろうか。

どれだけ手を尽くしても入手できなかった。あれだけ特殊な作品だと、ビクターのレコードもどれだけで生産したのだろうか?おそらく1,000とか2,000という数ではなかっただろうか。

それを購入した人は、元々間宮芳生とコンポジションに興味があった人に限定されるだろうし、そうだとしたらあれだけの演奏レベルと信じられない解説書の充実ぶりからみて、あれを手放す人はほとんどいないと推測できた。

わが母校のように音楽教師が相当な向学心の高さを持っていなければ、学校での購入もないだろう。

ということで、僕はこのLPボックスを喉から手が出るくらい欲しくてたまらなかったが、散々探し求めても発見(購入)することができなかったので、もう完全に諦めていた。

スポンサーリンク

 

数年前に馴染みの中古店で発見し、狂喜した

そんな中で、今から3年ほど前に行きつけの御茶ノ水にある中古CDショップで、偶然に発見したのである。都内に大々的に店舗を構えているディスクユニオンだった。

もちろん、もうLPを聴かなくなっている僕は、いつもCDを物色しており、かなりの量が置かれているLPのコーナーを覗いてみることは稀だ。間宮芳生の合唱のためのコンポジションの3枚組が置いてあるなんてことは以前に数十年かけて探してもどこにもなかったので、今更、探すこともなかった。

見つかるはずがないと諦めていたのである。

何となくボケーっとLPのボックスを見ていると、背中の部分、つまりタイトルが読み取れない何のレコードなのか判然としないボックスが立っていた。

これはなんだろうと、手を伸ばして取り出してみる。表のジャケットを見てビックリ仰天!

紛れもなく、あの間宮芳生の「合唱のためのコンポジション」の3枚組だった!

思わず、声を出してしまった。あんまりの衝撃に立っていられなくなった。

50年近くずっと探し求めていたあの幻の名盤が、目の前にあった

再度、ようやく入手できた3枚組LPボックスの写真
ようやく入手できた3枚組LPボックスの写真を再度アップさせていただく。これが欲しくてたまらなかったのだ(笑)。

 

しょっちゅう顔を出す行きつけの中古レコード店だった。

夢なら覚めないで!と祈った。足がガタガタと震える始末こんな感動は滅多にない

値段は正確に覚えていないが、確か2,000円前後、大変格安だったと記憶している。

足早に早急に帰宅して、中身を確かめる。改めて深い感動に襲われた。

スポンサーリンク

中身を確認して更に感動が押し寄せる

約50年前に高校の音楽室で聴いていたあのコンポジションのLPボックスが目の前にある。LPが入ったカラフルな内袋も良く見覚えのあるものだった。懐かしさに胸が引きちぎられそうになる。

そして読みたくてたまらなかったあの分厚な解説書もしっかりと同封されていた。

ようやく入手できた3枚組LPボックスと充実した解説書を並べて撮影。
ようやく入手できた3枚組LPボックスと充実した解説書を並べて撮影。この解説書がすごいのだ。

 

これは嬉しかった。元々の製本が悪かったのだろう。それぞれのページはバラバラになってしまっているものが多かったが、十分に美しく何の不満もない

思っていたよりも更に充実した解説書だった。あの著名な小泉文夫がここまで間宮芳生の「コンポジション」を高く評価し、詳しい解説を展開しているのは想定外であり、驚きだった。

これはやっぱりどうしても入手して、しっかりと読み込まなければならないものだった。

50年近い強い願いが叶った瞬間だった。こうして夢は果たされた。

スポンサーリンク

間宮芳生の音楽は永遠に不滅

間宮芳生が95歳の天寿を全うして亡くなった。

間宮芳生の写真。サッカー日本代表の森保一監督に似ている!?
間宮芳生の写真。サッカー日本代表の森保一監督に似ていないか!?
聴衆を前にピアノを弾く間宮芳生の写真
聴衆を前にピアノを弾く間宮芳生。ピアノの腕前は驚くほど上手だったらしい。

 

間宮芳生の合唱のためのコンポジションのCDを聴きながら、僕自身の50年に及ぶ長い間宮芳生と「合唱のためのコンポジション」の思い出に耽りながら、一気にこの記事を書いてきた。

どうしても思い入れが強い。4部作、2万1千字以上という過去に例のない長いものになってしまった。

***********

間宮芳生先生。

どうか安らかにおやすみください。長い間、本当にありがとうございました。

貴方が作った音楽は、これからも永遠に不滅です。

心からの感謝を込めて。
合掌。

 

☟ 興味を持たれた方は、是非ともこちらからご購入ください。

先ずは、5曲が収められた合唱のためのコンポジションのCD。

様々な店からネットで購入できるが、いずれも送料がかかる点をご容赦いただきたい。送料込みの合計額の安い順に列挙させていただく。

① 1,392円(税込) 送料396円 合計1,788円


間宮芳生(作曲) / 日本合唱曲全集: 合唱のためのコンポジション 間宮芳生 作品集 [CD]

② 1,262円(税込) 送料548円 合計1,810円


間宮芳生(作曲) / 日本合唱曲全集: 合唱のためのコンポジション 間宮芳生 作品集 [CD]

③ 1,337円(税込) 送料476円 合計1,813円


間宮芳生(作曲) / 日本合唱曲全集: 合唱のためのコンポジション 間宮芳生 作品集 [CD]

④ 1,571円(税込) 送料250円 合計1,821円


間宮芳生(作曲) / 日本合唱曲全集: 合唱のためのコンポジション 間宮芳生 作品集 [CD]

 

☟ 第5番「鳥獣戯画」が収められたCD

衝撃的な最高傑作である第5番「鳥獣戯画」は演奏会のライブCDしか現在は入手できない。松原混声は日本のトップアマチュア合唱団であり、演奏は間違いない。他にも例の信長貴富の「初心のうた」など魅力的なラインナップで、これは貴重なCDである。

3,300円(税込) 送料120円 合計3,420円


2枚組CD 松原混声合唱団第24回演奏会 間宮芳生《鳥獣戯画》 信長貴富《初心のうた》/新実徳英《ビオス》松 / ブレーン

 

おすすめの記事