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昨年、ベストワンに輝いた名作だが
「リコリス・ピザ」。今年(2023年)発表された昨年度公開映画のキネマ旬報ベストテンで見事ベストワンに輝いた作品。
ちなみに第2位は、あの「トップガン マーヴェリック」なのである。
あの世界中で大ブームを巻き起こして熱烈なファンを量産したトップガン マーヴェリックよりも高く評価された映画って、どうしたって気になるだろう。
何だかんだ言ってもキネマ旬報ベストテンのベストワンは大変なこと。どう考えても駄作なわけがない。
しかもこの映画の監督は僕も大注目しているあのポール・トーマス・アンダーソンなのである。
最近のものでは、この熱々たけちゃんブログでも取り上げた「ファントム・スレッド」が記憶に新しいところ。
題材はズバリ若者たちの恋愛活写。青春恋愛物語である。
ポール・トーマス・アンダーソン監督はある一つのことに取り憑かれたような凄みを持った人間を描かせたらピカイチなのであるが、そんなアンダーソン監督が描いた青春恋愛物語。
しかも世評は極めて高かったとなれば、本当に期待に胸が高鳴ってしまう。
ブルーレイはかなり早いタイミングで発売され、直ぐに廉価となって再発売されたので、非常に入手しやすい代物である。
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映画の基本情報:「リコリス・ピザ」
アメリカ映画 133分(2時間13分)
2022年7月1日 日本公開
監督・脚本・製作・撮影:ポール・トーマス・アンダーソン
出演:アラナ・ハイム、クーパー・ホフマン、ショーン・ペン、トム・ウェイツブラッドリー・クーパー 他
音楽:ジョニー・グリーンウッド
評価:アカデミー賞では、作品・監督・脚本という主要3部門でノミネートされたが、受賞はならなかった
キネマ旬報ベストテン 2022年外国映画ベストテン第1位 読者選出外国映画ベストテン第6位
タイトルのリコリス・ピザの意味は
映画を観てもピザが全く出てこないので、面食らわれる方が多かったのではないか。このラコリス・ピザという映画のタイトルはどこから来ているのか?
これはピザが出てくる映画ではない。
アメリカのとある店から取られた名前だ。
1969年から1980年代後半にかけてカリフォルニア州南部で店舗を展開していたレコードチェーン店の名前なのである。
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どんなストーリーなのか?
1970年代。アメリカのロサンゼルス、ハリウッド近郊のサンフェルナンド・バレーの高校生のゲイリーは偶然見かけたカメラアシスタントのアラナに一目惚れ。
アラナはゲイリーの10歳も年上だった。この不釣り合いの2人の恋の顛末が非常に印象的な映像と懐かしい音楽に彩られながら描かれる。
主人公2人の颯爽と走る姿が売り
まあよくあるボーイ・ミーツ・ガールの青春恋愛ものなのだが、高校生の男子と10歳年上の社会人女性という組み合わせのおもしろさが売りでもある。
そんなありきたりのボーイ・ミーツ・ガールを、アンダーソン監督は独自の映像美で映し出す。
要所要所で何度か現れるのは、この二人が並んで走る姿。二人で並走するシーンもいいが、とにかく一刻も早く相手に会うために脇目を振らずに、走る。
走って会いに行く。
それがいかにも爽やかで、観ているこちらも清々しい気分になる。
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高校生のゲイリーが僕は受け入れ難い
この映画に描かれる恋愛は、高校生の男の子と、カメラアシスタントとして既に社会人として働いている女性という組み合わせの妙が先ずは第一。
その年齢差、10歳も違う。
ある程度の年齢になると、10歳も20歳も歳の違いなどほとんど意味がなくなってくるが、16歳の高校生と26歳のキャリアウーマンとは生きている世界がまるで違う。
この場合の10歳の年齢差は二人にとってかなり重要な違いであり、それはほとんど生きている世界がもう全く別物だ。
だが、そうであっても愛し合ってしまった2人には、そんなことはどうでもいいこと、となるのが普通の展開だろう。
若い未熟な高校生の男の子に対して、もうある程度世の中の酸いも甘いもある程度分かっているOL。
そのOLが未熟な高校生の男の子をどうリードしていくのか、っていう話しになるのが定番だが、この映画はそうではない。
一般の予想を裏切る条件設定
むしろ全く逆なのだ。
それが僕としては非常に嫌で、抵抗がある。
日本ではほとんどあり得ない、受け入れ難い設定なのだ。
このゲイリーという高校生は、何と高校生とは到底思えない、ある意味でもう既に大人になっていることが重要だ。
実に生意気で鼻持ちならない奴なのだ。
生意気なだけではなく、子役からスタートして俳優になったことに加えて、信じ難いことに、高校生にして起業家であり、自分で店を開店させてオーナーとして差配を振るう。
こういうことは日本でもないわけではないだろうが、ごく稀なレアケースであり、こんな特別な高校生が10歳も年上のキャリアウーマンに恋をしても、歳の差なんかが影響を与えるとは思えないというほどの、高校生らしからぬガキである。
僕はこのゲイリーに、どうしても好感を抱けない。
どうしてこんなに日本でも高く評価されるのか、不思議でならないというのが正直なところ。
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二人とも全くの素人、初めての映画出演
ポイントのもう一つは、主役を演じた二人が全くの素人で、映画初出演ということだ。
但し、ここはもう少し正確に情報を伝えないと勘違いされてしまう。
アラナ・ハイムのこと
先ずはアラナを演じたアラナ・ハイムは映画は初出演には違いないが、ロックバンドのメンバーとしてエンタテイメント界には席を置いている人間だ。
「ハイム(HAIM)」は、アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス出身のポップ・ロックバンドで、アラナ・ハイムはギター、キーボードとヴォーカルも担当している。
このハイムというバンドは、アラナ・ハイムを含めて実際の3姉妹で結成されている。
ちなみにメンバーは、エスティ・ハイム(ベース、ボーカル)、ダニエル・ハイム(リードボーカル、ギター)、アラナ・ハイム(ギター、キーボード、ボーカル)の3姉妹である。
クーパー・ホフマンのこと
ゲイリーを演じたクーパー・ホフマンの父親は、2014年に惜しまれつつも46歳で亡くなったオスカー俳優フィリップ・シーモア・ホフマンである。
「カポーティ」でオスカー獲得、特にポール・トーマス・アンダーソン監督な映画の常連だった名優だ。
息子は風貌が父親そっくりである。
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アンダーソン監督の一人舞台
いずれにしても、映画界やエンタテイメント界に縁があるとはいうものの、俳優としては全くの素人を使って、新鮮な恋愛ものを撮影したアンダーソン監督には敬意を表したい。
この映画では、アンダーソンは脚本、監督はいつものこととして、製作はもちろん、今回は撮影まで受け持っている。
ポール・トーマス・アンダーソンの一人舞台のような映画なのである。
特別どうってことのない映画かな
駆け抜ける姿など見どころは豊富だが、この映画がそれほどまでに高く評価される理由が分からない。
ピンと来なかったのである。
僕にとっては特別どうってことのない映画だった。
そうは言っても、これだけ高く評価された映画である。
読者の皆さんがその目で直接観ていただいて、真価を確かめていただきたいと切に思う。
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