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通算5冊目の森岡毅の本はリーダーシップ論
2ヵ月振りに読んだ森岡毅の本はリーダーシップ論だ。森岡毅の本を読むのは、これが通算5冊目となる。森岡毅としては6冊目の本となる。
過去に読んで、その都度紹介をしてきた森岡毅の4冊はいずれもおもしろく、大いに惹きつけられ、感銘を受けたが、今回のリーダーシップ論もおもしろかった。
本書の謳い文句は「誰でも人を動かせる」ということで、リーダーシップはある特定の人に生まれつきに備わっているような先天的なものでは決してなく、後から誰でも身につけることができるものだということだ。
その誰でも努力次第で身に付けることのリーダーシップの極意を、森岡のいつもの熱い口調で縷々説いていく。
僕は、実は自分で言うのもどうかと思うが、リーダーシップはそれなりに身に付いており、森岡が本書の中でも書いているように、元々生まれた時から備わっていた僕の個性というか、先天的な特徴みたいなものだと考えている。
だから、リーダーシップを身に付けるための本というのは、こと僕自身に関していうと、あまりニーズは高くなかったが、読んでみるとこれはこれでおもしろく、本書もまたいつものように、一気呵成に読み終えた。
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本書の基本情報
日経BP発行。2020年12月14日第1版第1刷発行。僕の手元の本は、2022年6月7日発行の第5刷である。
ページ数は、はじめにと目次、最終ページの編集注釈を含めて全296ページ。
森岡毅が書いた6冊目の本となり、今のところその後の新作は出版されていないため、本書が森岡毅の最新の本ということになる。
本書の全体の構成
「はじめに」と「おわりに」を前後に置き、全体は8つの章から成り立っている。以下の通りである。
これを見るだけでも、本書での森岡毅の狙いと目的が明確になる。各章のタイトルと小項目はかなり具体的なので、これを読めばそれだけでもその内容が想像できるというもの。
先ずは興味のある部分から読んでみるのもいいだろう。
はじめに リーダーシップは身に付けられる!
第1章 リーダーシップは”特別な人"の能力ではない
❶ それは生まれつきではなく、意識して、身につける力である
❷ 「T型」と「C型」のリーダーシップ
第2章 「人を動かす力」の源泉は「欲の強さ」である
❶ 欲とはなにか
❷ リーダーシップを身につけて得られる絶大なメリット
第3章 欲が足りない人はどうすればよいのか?
❶ 「3WANT'Sモデル」でやりたいことを探す!
❷ 「脳」を慣らせば、「欲」は出やすくなる
❸ "討死”もなれればどうとうことはない
第4章 日本人のリーダーシップはなぜ育たないのか?
❶ 「日本でしか使えない日本人」問題
❷ 日本人女性が抱えるダブルパンチ
❸ ”羊気質””痛がり屋さん”から脱却しよう
第5章 リーダーシップを育成しやすい環境へ泳げ!
❶ リーダーシップを伸ばしやすい3つの環境
❷ 「大企業の仕事は大きい」という幻想
第6章 仲間を本気にする関係性をどうやって築くのか?
❶ 共依存関係とは何か?
❷ 褒めることのリスク
第7章 私自身の悪戦苦闘のリーダーシップ
❶ 暗黒のリーダーシップ
❷ 人を活かす存在になれ
❸ 「一緒にやる」ということ
❹ リーダーシップとは何か?
第8章 危機時のリーダーシップ
❶ コロナ問題の本質とは何か?
❷ みんなで一緒に沈む国
❸ プロなら100と0の間で解を見つけよ
❹ ”責められる覚悟”のない大人たち
❺ コロナ災厄の出口戦略とは何か?
おわりに 未来は我々がつくる!
森岡毅はビジネスパーソンを3つに分類
森岡毅はこのブログでも既に紹介済みの過去の本の中でも触れているが、本書では特に詳しく、ビジネスパーソンは能力の特徴によって、大きく3つの属性に分類できるとしている。
① T型・・・Thinking:思考力を強みとする人
② C型・・・Communication:伝える力や人々と繋がる力を強みとする人
③ L型・・・Leadership:人々を統率して動かす力を強みとする人
多くの人は、そのどれか1つに特徴が偏るという。
森岡は、本書の中で、「あなたの属性の見極め方」と具体的に展開しているので、一度やってみるとおもしろいと思う。
これは以前(2022年5月)テレビで見た林修の「日曜日の初耳学」に出演した森岡毅が詳しく説明していたので、ご覧になられた方も多いだろうと思われるが、実際にやってみることをお勧めしたい。
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典型的なL型人間にとっては本書は不要かも
本書は元々はリーダーシップに恵まれていないT型人間とC型人間に、いかに努力して後天的にリーダーシップ力を身に付けさせることができるかということを説いた本なので、元々リーダーシップに恵まれた人、つまり本書にいうL型人間が読んでもあまり得るものはないかもしれない。
僕にとってもあまりニーズは高くなかったというのはそういう意味だ。
実際に今まで読んできた森岡毅の一連の本の中では、僕にとっては最も魅力の薄かった本だったと正直に言うしかない。
だが、それは本書が悪いわけではない。本の書かれた目的、狙いと僕のニーズが合致しなかったという、ただそれだけのことである。
その意味で、本書は読者を選ぶので十分に注意してもらう必要がある。
繰り返すが、本書の狙いと目的は、T型人間やC型人間など、どちらかというとリーダーシップが発揮しにくい人、リーダーシップに課題を感じている人に、努力をして後天的にリーダーシップを身に付けるための本である。
但し、その大前提として、森岡毅は組織の中で活動するに当たって、一番重要なスキルと能力は、リーダーシップにあるという考えが、基本になっていることを知る必要がある。
会社でもどんな組織でも、最も求められ、大切な能力はリーダーシップであり、それが不足している、あるいは発揮しにくい人は、何とかして努力して、それを身に付ける必要があるし、それは努力次第でどうにでもなるものだということを力説している。
本書はリーダーシップをどのように発揮するのか、そのリーダーシップの中身としてはどうあるべきなのかという、リーダーシップそのものの内容を突き詰めたものではない。
どうやったらリーダーシップは身につくのか、それが主眼になっているので、その点だけは理解して読み出さないと、途中で失望感を味わうことになるので、注意が必要だ。
目的が合致するならこれ以上の本はない。
リーダーシップを身に付けたい、自分はリーダーシップに恵まれておらず、それでは自分にとっても組織にとっても、致命的なので、何とかしてリーダーシップを養いたいと切望する人にとっては、本当にありがたい本となる。
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森岡毅のリーダーシップに関する主張
では、T型人間やC型人間などリーダーシップが苦手のビジネスマンは、どうやったらリーダーシップを身に付けることができるのか?
そのノウハウを解いたのが本書。森岡は本書の中で、実に分かりやすく、しかも熱く自分の考えを説いているので、ここはしっかりと読み込んでほしい。
リーダーシップを持ち合わせていない人を、いかにしてリーダーシップの重要性を理解させ、目覚めさせるのか?
本書の第2章にその本質論が展開され、具体的な取組み方法は第3章に詳しく書いてあるので、じっくりと読んでほしい。
森岡毅の考えは、非常に具体的であり、分かりやすい。それを熱く語るので、ここは騙されたと思って森岡流のリーダーシップ取得法を学んでいただけばいいだろう。
森岡毅はリーダーシップを「人を動かす力」と捉える
森岡毅は、明確に断言して止まない。リーダーシップは「人を動かす力」であると。
そうなると、リーダーシップを身に付けるということは、どうやったら「人を動かすことができるか」と同じ問いかけになる。
そしてあの有名なD・カーネギーの「人を動かす」は使えないとバッサリだ。
褒めることのリスクについても、熱く語られる。
このあたりもどうか実際に本書を読んでほしいというしかないが、一言だけ触れておくと、こういうフレーズが出てくる。
「何かを強く望まない者が、人動かすことはできないのです」
『「こうしたい、こうありたい」と強く願う覚悟のリーダーシップが必要に』
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森岡毅はまた人間の本質に遡る
既に紹介している森岡毅の過去の本の中でも、僕が森岡毅を読んで深く打たれるのは、森岡毅の本は単なる自己啓発本とかハウツーものではなく、常に人間の本質、「人間は自己保存最優先」と森岡が考える人間の本質的な欲にまで踏み込んで、そこから自論を展開している点だ。
人間に対して、かなり絶望的な視点でその本質を見ており、そこから森岡毅の組織論もリーダーシップ論も流れ出てくる。
ちょっと冷徹過ぎないかと思いながらも、森岡毅の人間の本質論を否定することはできず、結局はそのとおりだなと納得してしまう。
今回も、リーダーシップを理解し、それを身に付けようとすれば、人間は自己保存したいという欲こそが、行動原理であるというところから出発するしかないと主張する。
それが類い稀な説得力を持つ。それをどこまでも熱く語るので、読む者はすっかり乗せられてしまう。これは褒めているので、念のため。
その人間の本質論は非常に重要なので、先ずはこの森岡毅の主張を理解する必要がある。
後は具体的な展開だ。
一番重要になってくる「3WANT'Sモデル」
森岡が具体的に強調するのが、「3WANT'Sモデル」だ。「3つの欲しい」である。これは実に的を得ていると得心した。
さすがだな、そのとおりだなと痛感させられる考え方。
その内容はどうか本書を読んでほしい。必ずや納得し、行動変容しなければと思えるはずだ。
森岡自身の過去の失敗談が最高の読み物
「森岡毅」の誕生ストーリーが熱い。
自身の過去の失敗をありのままに書く潔さが森岡の魅力であり、それがそのまま説得力にもなるあたり、いつも唸らされてしまう。
今回は、第7章 私自身の悪戦苦闘のリーダーシップがその部分。この第7章は本書全体を通じての白眉とも呼ぶべき感動的な部分だ。
これを読めば誰だって心を動かされないわけにはいかないだろう。
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コロナ対策に関しての大学の対応をコテンパンに糾弾
リーダーシップを巡って、直接は関係ないようにも思えるが、このコロナ禍の対応に対して、適切なリーダーシップを取らない様々な業界や組織に対して、森岡毅は驚くほど厳しい批判を展開している。
森岡毅がここまであからさまに組織や業界を批判し、糾弾することは珍しい。
その槍玉に挙げられている筆頭は、大学だ。大きく2点の糾弾が展開される。
一つは対面授業をこんなに長期に渡って放棄し、大学の施設も使わせずに閉鎖していること。ちなみに本書が書かれたのは、もう2年も前(2020年の夏から秋)なので、ご注意を。
もう一つは、そうやって対面授業を完全に放棄しながら、授業料や学費を1円たりとも返還しようとしないこと。
特に後者に対しては、実に手厳しい。コテンパンにこき下ろしている。斬りまくりだ。
その主張は至極ごもっともなことで、僕も全く同感。思わず溜飲が下がった。
これに反論しない大学という組織もお粗末極まりない。
大義のためにリスクを取れる人がいなければこの世界は少しも変わらないということを、併せて主張する森岡に拍手喝采を送りたい。
森岡毅は現在(株)刀の代表取締役CEO
森岡毅はUSJ(ユニバーサルスタジオジャパン)のイメージと抜き差しならぬ関係で結び付いているが、今はもうUSJは退社して、元々森岡が考えていたとおりに新たなベンチャー企業を設立し、その新会社である株式会社「刀」の代表取締役CEOというのが、現在の森岡毅の肩書である。
USJを辞めた経緯は、以前の著書の中にも触れられていたが、新しく立ち上げた自らの会社である刀の設立の経緯と、そこでの苦労話と直近の実績については、本書の「おわりに」に詳しい。
これは本書のエンディングとしては、少し重過ぎたきらいがあったのと、必ずしもリーダーシップ論とは直結しない(大いに関連する話しであることは認めるにやぶさかではないが)と思われるが、非常に重要な話しで、読み応えは十分あった。
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相変わらず熱く、アグレッシブな森岡毅に圧倒される
森岡毅はとにかく熱くて、どこまでもアグレッシブだ。
リーダーシップは、意図的に経験を貯めることで身についていく後天的なスキル。欲の強さを素直に解放して、その矛先を共同体にとっての価値と合わせていくことで、誰もがリーダーシップを発揮していくことができると説く森岡毅。
その森岡毅の熱い説得力に圧倒されてしまう。
これはやっぱりかけがえのない貴重な1冊というしかない。
特に自分自身にリーダーシップが不足していると感じている方にとっては、必読だ。
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