目 次
シリーズ第6回目
それでは、今回は恒例のギンレイホールのエピソード=トリビアも除いて、いきなり本題に入らせていただきます。
ドンドン進めて行きたいと思います。まだまだギンレイホールで観た全ての映画の3割にも到達しておりませんので。そして今回は飛びっきりのお気に入り映画も含まれていますので、先は長いのです。
それではスタート!
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19.2017.11.18〜12.1
人生フルーツ 日本映画
監督:伏原健之
主演:津端修一、津端英子他
これは本当に素晴らしい映画なのだが、普通の映画とは全く異なるので、注意が必要だ。
これは完全なドキュメンタリーなのである。主人公もその奥さんも本人自身が実名で出演している。ここにフィクションの要素は全くない。
そして、このドキュメンタリーとしての「人生フルーツ」の素晴らしさはもう語り尽くせない。
これを観た人は誰でもこの夫婦を好きになってしまう。この映画のこともかけがえのないものと愛し続けることになる。
僕の周りにはこの映画を大好きという人が本当に多い。僕も大いに喧伝させてもらったが、かなり遠くの映画館にまで出向いて行って観た人も多く、口を揃えて観て良かった!と絶賛する。
愛知県春日井市の高蔵寺ニュータウンの一隅の雑木林の中で、野菜とフルーツを育ている老夫婦を淡々と描いていくのだが、この夫婦が本当に二人揃って何とも魅力的なのだ。元々ご主人は東大の建築科を卒業し設計士となったエリートで、当時、日本中に建築されたニュータウンの生みの親とも言える存在。だが、実際のニュータウンは彼が描いたものとは程遠く、夢破れる形で、かつて関わったニュータウンの一角に居を構えた。そこでの二人の生活振りが本当に素晴らしい。そして、好々爺のように見えて、信念を持ち続けている生き様に感銘を受けずにいられない。
これは東海テレビがシリーズで制作し続けてきたドキュメンタリーの第10作目。映画史に残る傑作ドキュメンタリーとなった。
誰が観ても、あんな風に生きたい、あんな夫婦になりたい、そう思うだろう。
この作品は非常に好評で、全国で定期的に上映が続いている模様。機会があったら、是非とも劇場で観てもらいたいものだ。
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八重子のハミング 日本映画
監督:左々部清
主演:升毅、高橋洋子他
これは若くしてアルツハイマーにかかった妻を15年間に渡って介護し続けた夫の実話。愛する妻のために最後は校長の職を投げ打ってまで尽くす姿にさすがに胸が一杯になる。
重度のアルツハイマーとなる八重子を見事に演じたのは、高橋洋子だ。高橋洋子は僕にとっては懐かしい名前。「旅の重さ」でデビューを飾り、直ぐに今で言う朝ドラのヒロインに抜擢されたあの高橋洋子だ。「北の家族」。ご記憶があるだろうか?最近は小説家として活躍していたようで、この映画が何と28年振りの映画復帰とのこと。
これは観ていてかなり辛くなってくる映画ではあるが、これが今の日本ではどこにでもある極めて身近な、現実的な家族模様であることが恐ろしい。
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20.2017.12.2〜12.15
マンチェスター・バイ・ザ・シー アメリカ映画
監督:ケネス・ロナーガン
主演:ケイシー・アフレック、ミシェル・ウィリアムズ、カイル・チャンドラー他
さあ、マンチェスター・バイ・ザ・シーの登場だ。この映画は僕の大のお気に入りで、ギンレイホールで観た全映画の中でも屈指の名作。素晴らしい作品だ。
こんなに気に入っているのだが、1回目に観たときにはどうもよく分からなかった。この映画はただ事じゃないな、何だかものすごい映画なんだが、良く分からない。これは何なんだ!?
というのが最初の僕の偽らざる本音だった。
僕がアメリカの地理や地域事情に詳しくないことが一つの要因。それに思い込みが相乗効果をもたらし、最初から混乱をきたす。
タイトルが先ず悪いと人のせいにする。
というのは、マンチェスターは僕の理解ではイギリスなのだ。
どう見てもアメリカのように見えるし、盛んにボストンのことが話題になる。マンチェスターはイギリスじゃないか、一方でボストンはもちろんアメリカだぞ。アメリカ独立革命の前哨戦になったボストン茶会事件があまりにも有名じゃないか。これは僕にも分かる。
おかしいなあ。どうなっているんだ?いよいよ混乱をきたす。この映画で描かれるのはイギリスなのか?それともアメリカなのか?それが最初から終わりまで気になって気になって、どうにも落ち着かない。映画の舞台がハッキリしないとどうにも辛くなってくるものだ。
そして、もう一つは、今日の映画では常套手段だが、現在と過去とが頻繁に行ったり来たりして、今ここで描かれているのは現在のことなのか、それとも過去のことなのか、非常に混乱してくるのだ。
だから、こういうアドバイスを最初からもらうことができれば、最初からとてつもない感動を味わえたはずなのだ。
それは、先ず一つ。
このマンチェスター・バイ・ザ・シーはもちろんアメリカを描いた映画だということ。何とマンチェスター・バイ・ザ・シーというのはマサチューセッツ州にあるアメリカの都市の名前で、イギリスのマンチェスターとは何の関係もない。ボストンの近郊だ。
そして、もう一つは、今、描かれているのは過去の回想なのか、現在なのかを常に意識して観ること。そんなに分かりにくいわけでは決してない。
その2点を注意しながら観れば、もう感動は約束されたようなものだ。
近所づきあいの悪い、中年の男のもとに実の兄の訃報が届く。そして残された息子、主人公にとって甥にあたるわけだが、その後見人を任されることになる。その甥とは小さい時から3人で非常に親しくしてきた間柄。今更、断る理由もないわけだが、彼はどうしても受けることができない。そこには言葉を失う壮絶な過去が絡んでいた。彼はそのトラウマ、彼の人生を決定的に狂わせてしまったこの重過ぎる過去を克服できるのか?
主演のケイシー・アフレックの素晴らしさに言葉を失うほどだ。ケイシー・アフレックはあの有名なベン・アフレックの弟だが、心に苦悩を秘めた深い表情とやり切れない絶望感をさりげなくにじます演技力は傑出していて、兄は遠く及ばない。僕は彼のマスクにもゾッコンだ。本当に魅力的な俳優。この作品でアカデミー主演男優賞を筆頭に、この年の名だたる主演男優賞を軒並み独占。当然のことだ。
深く絶望した人間を変に励ましたり、再起させたりするのではなく、その絶望の淵にまで一緒に落ちていって優しく寄り添うような、深い、とてつもなく深い愛情に満ちた映画。これは観てもらわなきゃ駄目だ。
本当にこの映画の深い味わいと真の救済は唯一無二のものだと、ただただ感嘆させられる。
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LION ライオン 25年目のただいま オーストラリア映画
監督:ガース・デイヴィス
主演:デヴ・パテル、ニコール・キッドマン他
この映画は、インドの幼い少年が5歳の時に遊んでいて道に迷い、そのまま自分の家に帰れなくなるが、オーストラリアの養親に育てられ、大学に進学し、高度のIT技術を身につけ、グーグル・アースの力で、映画のタイトルどおり25年振りにインドの自宅への生還を果たすという話し。完全な実話だという。
主役のデヴ・パデルは2008年のアカデミー作品賞に輝いたダニー・ボイル監督の「スラムドッグ$ミリオネア」で主役を演じて一躍注目された俳優。本作でも中々いい味を出しているし、養母役のニコール・キッドマンも悪くない。
現在のIT技術の粋とも言えるグーグル・アースの力でかすかな記憶だけを頼りに、あの混沌のインドの田舎町に辿り着ける実話は、正しく現代の奇跡と呼ぶべき感動ものだが、映画の感動は、現実そのものの感動を超えられなかったような気がして少し残念。
僕の職場絡みの映画仲間、例の「ギンレイホールで観た映画を語る会」のメンバーの一人Sさんは、この映画が初めてのギンレイホール体験で、この時に会員となり、以来、今日に至るまで全ての映画を欠かさず観ている。彼女にとっては記念すべき映画となっていることを付け加えておきたい。
21.2017.12.19〜12.29
美女と野獣 アメリカ映画
監督:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ
主演:エマ・ワトソン、ダン・スティーヴンス他
言わずと知れたディズニー映画。あの大ヒットしたアニメの実写化。こんな世界的に大ヒットした万人向けの映画をギンレイホールで上映するんだと驚かれる方もいらっしゃることだろう。僕も少し驚いた。
でもたまにはこんなこともいいだろう。上映期間を見てほしい。正にクリスマス🎄。ギンレイホールからの、映画ファン、ギンレイホールファンへの日頃の感謝を込めてのクリスマスプレゼント。
映画そのものは安心して観ていられる罪のないもの。たまにはこんな屈託のない映画でリラックスしたい。映像も音楽も実にゴージャス。悪役があまりにもどうしようもない悪い人物に描かれているところはどうしても抵抗があるが、それを除けば何の不満があろうか。
ヒロインのエマ・ワトソンは今更ながら本当に美しく、惚れ惚れする。何とも魅力的で、彼女を見ているだけで心が癒される。こんな映画を無邪気に楽しめないのは、無粋というものだ。
◯ 怪物はささやく アメリカ・スペイン合作映画
監督:J.A.バヨナ
主演:ルイス・マクドゥーガル、シガーニー・ウィーバー他
シガーニー・ウィーバーのファンである僕は楽しみしていたのだが、日程的にどうしても観ることができなかった。
22.2017.12.20〜2018.1.12
夜明けの祈り フランス・ポーランド合作
監督:アンヌ・フォンテーヌ
主演:ルー・ドゥ・ラージュ他
ポーランドに特別な思い入れがある僕としては、これは冷静に観ていられなかった映画だ。ポーランドという国は本当に運が悪いというか、どこまでも気の毒にできていて、第二次世界大戦ではあれだけヒトラーとナチスの標的になり、戦後は戦後で今度は旧ソ連に蹂躙し尽くされて、もう気の毒としか言いようがない。
この作品で描かれるのも第二次世界大戦終了直後の悲劇だ。ナチスの支配から解放してくれたはずのソ連軍が、ポーランドの修道女達を好き放題に蹂躙し、あろうことか修道女達は端から妊娠してしまう。医者にかかることすらできない。
それをこっそりと手助けするフランスの女医の話し。如何にも暗い、絶望に駆られる話しだが、もちろん実話で、本当にこの世界を呪いたくなってしまう。カティンの森事件といい、この時代のソ連兵の蛮行には怒りが収まらない。
ポーランドは東ヨーロッパにあっては珍しいカトリックの信仰の厚い国で、あの世界中の尊敬を集めたローマ法王のヨハネ・パウロ2世もポーランド出身だった。
本当に神は一体何をしているんだ、こんな敬虔な修道女にここまでの辛酸を舐めさせ、救えない神とは?
この悲劇から一人でも救いだそうと我が身を顧みずに、危険に身を呈するフランスの女医が本当に救いである。演じる女優がまた何とも魅力的な美しさで、僕は一目見るなり、彼女に夢中になってしまった。ルー・ドゥ・ラージュ。これからの活躍がとても楽しみだ。
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ローマ法王になる日まで イタリア映画
監督:ダニエーレ・ルケッティ
主演:ロドリゴ・デ・ラ・セルナ他
ダニエーレ・ルケッティはイタリアの才人監督。この映画でも独特の軽妙さを活かしながら、この実在の人物、というよりも現在のローマ法皇フランシスコの多難な生涯を過不足なく描いていく。
映画には途中までは、何の不満もなかったのだが、2人で演じた法皇の生涯。最後のローマ法皇に選出される時(コンクラーベ)の俳優が何とかならなかったのか!?
若き日を演じたそれまでの魅力的な俳優から全くの別人になってしまって、この違和感は半端なかった。
残念としか言いようがない。どう考えてミス・キャスト。あの俳優にはゲンナリだった。
まあ、これはあくまでも僕の個人的な感想だ。こんなことでこの映画を括ってはいけないのかも知れない。
南米出身の初めてのローマ法皇となったフランシスコ。映画に描かれた軍事政権下のアルゼンチンでの苦闘の半生と生き様は実に感動的なものである。
この記事を早速読んでくれた大学時代の同級生から、フランシスコ法王が今年の11月に来日し、広島と長崎を訪問するとの話しを教えてくれた。そうなんだ、来日、しかも被爆地に来てくれるのかと感嘆していたところ、今夜(2019.9.13)のニュースで、この話題が大きく取り上げられていて更に驚かされた。
あの例のポーランド出身のヨハネ・パウロ2世以来、何と38年振りのローマ法王2度目の来日だと言う。核兵器の撲滅に尽力しているフランシスコ法王が広島と長崎に来てくれるのは歴史的な快挙である。これを契機に、核廃絶への人類の切なる思いが一歩でも実現に近づくことを祈りたい。
それにしても、久保田支配人がチョイスした2本の映画が、こんな形で繋がるのもさすがの慧眼としか言いようがない。これを偶然と片付けては、事の本質を見失うことになる。
今回の紹介は、7本。ようやく全体で39本まで漕ぎ着けた。まだまだ先は長い。
引き続き、どうぞお楽しみに。